『マジック・イン・ムーンライト』ウディ・アレン監督インタビュー

ロマコメの名手が語る、リハーサルをしない理由とは?

#ウディ・アレン

若いころ、ずっとマジシャンに憧れていた

老いてますます盛ん…と言っては失礼だが、もうすぐ80代に突入するとは思えないほどノリにノッているウディ・アレン監督。現在、絶賛上映中の『マジック・イン・ムーンライト』は、オシャレで小粋な、アレン監督の本領発揮!といった作品だ。

舞台となるのは1920年代の南フランス。大富豪が入れあげているという美人占い師と、その正体を暴こうとする天才マジシャンのもつれた恋の行方が、コミカルかつロマンティックに描かれていく。

ケイト・ブランシェットにアカデミー賞主演女優賞をもたらした前作『ブルージャスミン』から一転、見る者を幸福感で包み込むようなロマコメを紡ぎ出してくれたアレン監督に話を聞いた。

──まさにマジックのように素敵な作品でした。マジシャンを主役にするというアイデアはどこから得たのですか?

監督:若いころ、ずっとマジシャンに憧れていたんです。昔からマジックやトリックなんかに興味があって、ステージで披露される手品やトランプマジック、マジシャンを見るのが好きで、いつも興味津々で見ていました。だから手品を題材にした作品の構想はずっとありました。これまで、僕の作品の中で手品は何度も登場していますからね。

『マジック・イン・ムーンライト』
Photo: Jack English (c)2014 Gravier Productions, Inc.

──天才マジシャンを、『英国王のスピーチ』のコリン・ファースが演じていますね。

監督:彼とは初めてですが、本作を撮影するにあたってハンサムで威勢がよい英国人俳優を探していたんです。この条件を満たす俳優はそんなに多くはいないのですが、コリン・ファースはこの条件をすべてクリアしていました。ハンサムだし、芝居は上手いし、ユーモアのセンスもある。チャーミングで、素晴らしい人物です。彼のスケジュールが空いていて、撮影に参加してもらえて僕は本当にラッキーだったと思います。

──一緒にお仕事してみた感想は?

監督:最高でしたよ。イメージ通りの人物で、とても頭がよくて、教養があって、紳士的。
一緒に仕事をして楽しい俳優でした。気難しいとか、問題を起こすとかそういったことは一切なく、現場でも気持ちのよい人でした。

わざわざ芝居を止めて口出ししたくないからリハーサルしない
撮影中のウディ・アレン監督(右)とエマ・ストーン(左)

──一方、美人占い師を『アメイジング・スパイダーマン』のエマ・ストーンが演じていますね。

監督:エマ・ストーンは、今やアメリカ人の誰もが愛するスターですよね。美人だし、才能がある。しかも面白いし、演技も上手い。彼女とは、この作品のあと、すでに別の作品でも一緒に仕事をしまして、本作とは違ってとてもシリアスな役柄を演じています。彼女は今や皆の憧れの的ですね。。

──撮影現場での彼女はいかがでしたか?

監督:素晴らしかったですよ。彼女は非常に頭が切れる。それに面白いし、とても仕事がしやすい女優さんです。彼女と仕事をすることができて、本当に楽しかった。だから、次の作品も彼女に出てもらおうってことになったんです。役柄のイメージに合えば、いつでも彼女を起用したいですよ。もちろん彼女のスケジュールが空いていればね。

──監督は、あまりリハーサルをしないと聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
『マジック・イン・ムーンライト』
Photo: Jack English (c)2014 Gravier Productions, Inc.

監督:ええ、先に色々やってしまうと面白味がなくなってしまうからです。ですから俳優さんにはセットに入ってもらって、その場でお芝居をやってもらいます。彼らの思うままの演技が非常に良い場合が多いんです。自発的に出てくる芝居がとても良い。
それに彼らはそれぞれに自分のすべきことがよく分かっています。台本を読んで、内容を理解して、この役を引き受けると言ったのです。役柄については十分理解をしてくれています。そして、注文通りの芝居をするのです。非常に上手い役者たちです。とても自然な芝居をします。だから僕がわざわざ芝居を止めてあれこれと口出しはしたくないんです。
もし僕のイメージ通りの芝居ができていない場合は、撮り直しをするだけです。それは映画の良いところですよね。気に入らなければボツにして、気に入るように撮り直すことができるんですから。

ウディ・アレン
ウディ・アレン
Woody Allen

1935年12月1日生まれ。ニューヨークのブロンクス区で生まれ、ブルックリンで育つ。高校在学中からギャグ創りにのめりこみ、大学中退後にギャグライター、放送作家に。60年からはスタンダップコメディアンとしても活動。66年に『What's UP, Tiger Lily?』で監督デビュー。ハリウッドに背を向けた映画人と知られ、『アニー・ホール』(77年)でアカデミー賞監督賞、作品賞などを受賞したのをはじめ、何度もアカデミー賞を受賞しているが、02年の特別プログラムのとき以外はアカデミー賞授賞式には出席していない。主な監督作は『カイロの紫のバラ』(85年)、『ハンナとその姉妹』(86年)、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(97年)、『マッチポイント』(05年)、『それでも恋するバルセロナ』(08年)など。

ウディ・アレン
マジック・イン・ムーンライト