『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』ギャレット・ウェアリング×フランソワ・ジラール監督インタビュー

監督も絶賛! ダスティン・ホフマンと共演した期待の天才子役を直撃

#ギャレット・ウェアリング#フランソワ・ジラール

約1000人をオーディションし、彼しかいないと決めた(監督)

複雑な環境で育ち心を閉ざした少年が、歌う喜びを知り才能を開花させていく様子を描いた感動作『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』。少年期のわずかな間しか出せない歌声、ボーイ・ソプラノをモチーフに、自分を信じることの大切さを訴える作品だ。

奇跡の歌声を持つ少年ステットを演じるのは、ハリウッドの期待を一身に浴びる新星ギャレット・ウェアリング。そして、ステットを厳しくも愛情を持って育てる著名な指導者カーヴィルを、名優ダスティン・ホフマンが演じている。

ムビコレは、来日した主演のギャレットとフランソワ・ジラール監督を直撃。映画の見どころなどを語ってもらった。

──ギャレット君は本作が初の長編映画ですが、抜擢の決め手は?

監督:まずこのステットという役は、ギャレットに出会うまで長い道のりでした。オーディションをした人数は約1000人で、本当に見つかるのかという不安もあるなか、クリスマス直前にある少年に決まりそうになったんです。ホリデー直前ということで、ここで決めてみんなで休みに入ろうという気持ちだったのですが、僕だけどうしても納得できなくてNOと言いました。深みが足りない、魂が足りない、核が足りない。これは大きなギャンブルでもあり、作品自体が立ち消えになってたかもしれないんだ。ダスティン・ホフマンのスケジュールもありますし、その後のスケジュールも既に組まれていました。何かが遅れてしまうとそれで映画が作れなくなってしまうことも大いにあるので、大きなリスクではあったんだけど、これじゃ無理だと僕は言ったんです。
その2週間後にギャレットとスカイプを通じてオーディションし、彼しかいないと決めたんです。危険な賭けではありましたが、監督というのは「この人」という人が見つかるまで妥協してはいけない。
この役に必要な強さ、核、そして役者としての力量、彼は全てを持ち合わせていました。(ギャレットを見ながら)その素晴らしい才能をこれからどんどん育てていってほしいですね。輝かしいキャリアが待っているはずだから。

『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』
(C)2014 BOYCHOIR MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (C)Myles Aronowitz 2014

──オーディションのことは覚えていますか?

ギャレット:オーディションは何回かありました。直接、対面したときもあれば、スカイプでのオーディションもありました。スカイプは、テキサスからL.A.に引っ越すときにしたのですが、家具もない部屋で、段ボール箱を積み上げた上にカメラを置いて撮っていたんです。45分間に及ぶ面接で、近くにいた犬が吠えて大変だったんだ。その後にスクリーンテストを受けました。ニュージャージーで少年合唱団と一緒にお芝居をする、という本格的なもので、相当練習を積んでやりました。体育館での撮影だったのだけども、歌を歌わなければならなかったり、何故かわからないけど「走れ!」と言われて走ったり、壁に顔面をぶつけたり、「僕は何をやっているんだろう」という気持ちでした(笑)。その2週間後に、役が決まったことを伝えられたんだ。

監督:いや、3日後くらいだよ(笑)。君はそう感じたかもしれないけどね。このスクリーンテストは結構本格的なものだったんだ。撮影準備ができてギャレットを呼ぼうと思ったら見当たらなくて、体育館の隅っこのほうでキャラクターになりきっていた。振り返ったら涙がたまっていて、今考えると彼なりのメソッドだったんだなと思うね。

──では、撮影中のギャレット君はいかがでしたか?

監督:いやぁ、本当に現場では集中していたよ。ベテランの俳優たちはギャレットほど準備万端ではなかったんだ。ダスティンは皆に色々な話をしているし、エディ・イザードは面白い話で笑わせたりしていて、「ハイハイ始めますよ!」とまとめていたけど、ギャレットに対してはそんなことは一切なかったんだ。とてもやりやすかったよ。音楽、セリフをしっかりと頭に入れて臨んできてくれた。当然の準備かと思うけど大人の役者はおざなりになっている人が結構いるんだよ。(ギャレットに向かって)忘れちゃだめだよ!

撮影は、仕事とは思えないくらい楽しかった(ギャレット)
撮影中のギャレット・ウェアリング(左)とフランソワ・ジラール監督(右)

──歌うシーンがたくさん出てきましたが特別な訓練をされたのですか?

ギャレット:“ぶっつけ本番”でした!……というのは嘘で(笑)、いやぁ、もう練習しまくりでした。合唱については経験がなかったので、全く新しい世界に飛び込んでいくような気持ちでした。なので最初はとっても難しかったんだけど、スタッフの皆が助けてくれたおかげで何とかこなすことができました。アメリカ少年合唱団のみなさんと一緒に実際にトレーニングをして、フェルナンド・マルファールさんという合唱団の指揮者に基礎から合唱をしっかり教えてもらったんだ。この作品に参加しなければ知らなかった世界を学ぶことができました。

──普段はどんな音楽を聞くんですか?

監督:バロック音楽ばっかりだろ?

監督:なに、それ?

監督:アハハハ!

ギャレット:僕はジャンルというより、この曲いいなと思うものがあったら、何回も何回も飽きるまで聞くんです。飽きたら次の曲を何回も何回も聞いて、その繰り返しです。歌手で言うと「シャンデリア」という曲を歌うSia(シーア)が好きです。

──歌や踊りは好きですか?
撮影中の様子

ギャレット:歌もダンスも好きで、自分では結構上手いって思ってます(笑)。俳優になる夢は昔からあって、それを支えてくれている両親にはとても感謝しています。こんな若くしてこの仕事をさせてもらえてるっていうのはすごくありがたいことだし、長編初でこの作品に出演させてもらっているのは凄いこと。豪華な共演者陣と仕事ができたことにも感謝しています。

──ダスティン・ホフマンと共演した感想は? 緊張しましたか?

ギャレット:彼は緊張させる人ではなく、むしろこちらを安心させてくれるとても優しい人で、とてもハッピーにさせてくれる人でした。教えられることは教えてあげようというサービス精神がある人なんだよ。

──撮影中の印象深いエピソードは?

ギャレット:カメラが回っているときも回っていないときも楽しかったです。仕事とは思えないくらいね。撮影中のエピソードをひとつ話すと、お昼に行こうとしたら黒のSUV車が近づいてきて、窓が開くとキャシー・ベイツが運転していたんだ。お昼に行くから一緒に来ないか誘われたので、父親と彼女の車に乗ってシェイクシャック(ハンバーガー店)に行ったんです。そしたらダスティンもその店にいたんです。ダスティンは、はしゃいじゃって、みんなの分のハンバーガーも注文してくれて「ボクはもう4個目だけど、みんなは2個目どう? ミルクシェイクは? ポテトは?」なんて一生懸命勧めるんです。それがとても楽しかったんです。

──ギャレット君にお聞きしますが、今後の展望は?

ギャレット:とにかく最前を期待して常にポジティブな姿勢でいることが重要かなって思っています!

ギャレット・ウェアリング
ギャレット・ウェアリング
Garrett Wareing

本作が長編映画初出演となる、期待の新星。幼い頃より芸術に強い興味を持つ。11歳の時に、演技の夢を追求するため、同じく俳優の姉マッケンジー・ウェアリングと弟メイソンとともに、故郷テキサス州カレッジステーションからロサンゼルスへと移り住んだ。その後、国際モデル&タレント協会(IMTA)2013に加わり、13年度のプリティーン男子モデル賞など数多くの賞を獲得し、かなりの数のハリウッドのエージェントの注目を集めた。

フランソワ・ジラール
フランソワ・ジラール
Francois Girard

1963年1月12日生まれ、カナダのケベック州出身。1993年に監督した『グレン・グールドをめぐる32章』がカナダのジニー賞4部門を受賞。続く98年『レッド・バイオリン』が米アカデミー賞最優秀作曲賞を受賞し、名実ともに国際的に名前が知れ渡る事になる。2007年にはアレッサンドロ・バリッコのベストセラーを映画化した『シルク』が世界中で公開された。 97年、ストラヴィンスキーとコクトーの共作「OEDIPUS REX / SYMPHONY OF PSALMS」で初めてオペラの演出家としてデビューし数多くの賞を受賞。ほかのオペラ作品に、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックのための「LOST OBJECTS」、ワーグナー作「ジークフリート」などがある。 また、演出した舞台劇には、アレッサンドロ・バリッコ作「1900年/NOVECENTO」、カフカ作「審判」、井上靖作「猟銃」など。近年では、シルク・ドゥ・ソレイユが08年〜10年まで東京で初めての常設公演としておこなった「ZED」、そしてラジオシティ・ミュージックホールで幕開けし、クレムリン・シアターで上演され、ラスベガスで常設公演となった「ZARKANA」の脚本と演出を担当している。