1996年フランス、コミューンエナン=ボーモン生まれ。小さな頃から歌が得意で、オーディション番組に参加していた。2013年に世界的な人気を誇るオーディション番組「The Voice: la plus belle voix」に出場し、人気を得て歌手デビューを果たす。翌年、『エール!』で映画に主演デビュー。フランスのアカデミー賞ともいうべきセザール賞、リュミエール賞の最優秀新人賞を受賞。2015年3月にデビュー・アルバム「Chambre 12」を発表、フランスでは初登場第1位に輝き、スイス、ベルギーなどフランス語圏で大ヒット中。
フランスの田舎町で、耳が聴こえない両親と弟と暮らし、彼らの耳となり口となって過ごしてきた16歳の少女・ポーラ。そんな彼女はたぐいまれな美しい歌声の持ち主だった。結束の固い家族との絆、その家族には決して聴いてもらうことのできない歌への思いに板挟みになる少女の葛藤を描きながら、決して暗いトーンではなく、むしろ突き抜けたような明るさと温かい愛に満ちた『エール!』。熱血漢の父と美しく陽気な母、おませな弟という型破りな家族とのやりとりで笑わせながら、その健気さで爽やかな涙を誘うヒロインを熱演したのはこれが映画デビューとなるルアンヌ・エメラ。本国では大人気のアイドル的存在でもある彼女が、6月にフランス映画祭で来日した際に話を聞いた。
ルアンヌ:フランスで「The Voice」というオーディション番組に出場していた時に、監督のエリック(・ラルティゴ)が私を見て、映画をやってみないかと声をかけてくれたの。カメラテストを受けて出演が決まって、それから4ヵ月間、演技と手話の特訓を受けたわ。
ルアンヌ:時にはね。でも滅多になかった。エリックがいつも一緒にいて、助けてくれたから。いろいろアドバイスしてくれて、きっとうまく行くからと言い続けてくれたの。撮影現場ではみんな優しくて、最高の雰囲気だった。
ルアンヌ:その通り。学校で劇はやったことがあるわ。でも、先生には芝居が下手すぎると言われて、学年末の芝居に出られなくなってしまったの。
ルアンヌ:覚えてるわ。友達のマチルドと一緒のシーンだったの。子牛の世話をしている場面だったんだけど、私の演技が本当にうまくいかなくて、2週間後にもう1度撮り直したの。マチルドが、飼っている子牛を可愛がりすぎちゃいけない、いずれ別れなきゃならないから、という場面よ。
ルアンヌ:いるわ。2人いて、彼女たちは親友よ。本当にマチルドみたいな子たちよ。いつも3人で一緒にいるの。誰か1人が落ち込んだりすると、ほかの2人で励ます。外見も似ていて、他人からはよく姉妹だと間違われるの。彼女たちが大好き。私のマチルドたちよ。
ルアンヌ:素晴らしいわ。ただ、演技ができるようになって、すごくうれしいけど、歌うことと較べたりはしない。私にとってはどちらも同じものなの。どちらも物語を語ることだと思うから。どちらかを選べと言われても無理ね。
ルアンヌ:その通り。私にとって大切なのは物語ることで、そのストーリーを人々と分かち合うことなの。
ルアンヌ:この家族はとっても気性が激しいと思う。でも、愛すべき人たちで、すごく仲が良くて、お互いを大切にしている。そりゃ、問題も抱えているけど、人間誰だってそうだし。彼らが愛に満ちた人たちなのは明らかよ。素敵な家族だと思うわ。
ルアンヌ:いいえ、うちはポーラの家族とは全然違うわ。うちは6人きょうだいなの。私には妹1人と姉3人、兄がいて、みんなとても仲がいいわ。それぞれ離れて住んでいるけど、だからこそ、たまに会うことができると本当にうれしいの。いつも恋しく思ってるから。でもスマホのアプリやSNSでやりとりするし、電話でもしょっちゅう話してるわ。本当に仲がいい家族なの。狼の群れみたいなの。
ルアンヌ:ポーラはとてもとても強い子よ。私自身はそうでもない。もちろん弱くはないけど、それはきっとママのおかげだと思う。でもポーラは本当に強いと思うの。彼女が中心になって、家族のためにお金を支払いをしたり、家畜の世話をして、銀行に行って……全てやってるのよ。家族を代表して世間と話すのも彼女。外の世界と家族をつなぐ役目をしているの。16歳の少女として考えたら、とてつもなく強い子よ。まだ十代なのに大人の役割を果たしている。信じられないくらい強いの。だから、彼女は私より強いと思う。私とは話が違う。同じ立場になったら、彼女のように振る舞えるかわからない。
ルアンヌ:そんなことないわ。小学校ではみんなと歌ったし、リセでも友達とグループを作って歌っていたから、ただ、最近はそういう機会がなくて、ちょっと寂しかったから、みんなで歌うのは楽しかったわ。でも、フランスでステージに立つ時は1人じゃないの。いつも大好きなミュージシャンたちに囲まれているわ。私にとって兄みたいな人たちよ。
ルアンヌ:もちろんよ。女優になるずっと前から。最近だと先週、ステージで。でもステージに上がれば、毎回いつだってそうなの。いつも観客と何かを分かち合える強烈な瞬間。デビューして2年になるけど、ステージに上がったときはいつも私にとって魔法の時間よ。自分の周りの人たちと何かを分かち合うことが好きなの。だから、きっとこんなにおしゃべりで、ステージに立つのも大好きなのね。演じるのも好きだし、読書も好き。コミュニケーションをとって、物語を語って、聴いて、発見して、ということね。
ルアンヌ:本当は人が思っているより、ずっと脆(もろ)いわ。涙もろいけど、なぜか大変な時には泣けないの。変よね? 大したことじゃない方が、簡単に泣いちゃう。歌を聴いたり、本を読んだり、友達から「彼氏と別れた」と聞かされた時とか。でも、重大なことになると、なぜかそうならない。そういう性格なのね。それより、楽しく笑っていたいの。人生には大変なことも起きるけど、もっと大変な目にあっている人たちが常にいるから。明日になれば大丈夫、と思うようにしてるの。
ルアンヌ:いろいろあるわ。東京に来るのは小さい頃からの夢だったから、何でも見てみたい! 3日間しかないので、どれだけ行けるかわからないけど(笑)。
(text:冨永由紀/photo:中村好伸)
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