1921年8月29日生まれ、ニューヨーク州クイーンズのアストリア出身。弁護士でブティック経営者の母セイディ・バレルと、インテリア装飾家の父サミュエル・バレルの間に一人娘として生まれ、ニューヨーク大学で美術史を学んだ後、「Women's Wear Daily」誌で初めての仕事に就くも退職。インテリアデザイナーのエリナー・ジョンソンに師事した後、自身でインテリアデザイン業を始める。1948年、広告会社エグゼクティブだったカール・パテルと出会い結婚、アンティークの生地を正確に再現、製造することを専門としたテキスタイル会社Old World Weavers社を夫婦で設立。裕福な顧客を相手に事業を成功させるうちにニューヨーク社交シーンの常連となり、その独創的なスタイルが称賛されるようになる。 2005年、メトロポリタン美術館がアイリスのコスチューム・ジュエリーのコレクション展示「Rara Avis: Selections from the Iris Apfel Collection」が行われ、大いに注目を集める。2015年8月1日に夫のカールが死去。
94歳の今もなお、ニューヨークのカルチャーシーンに多大な影響力を与え続けるファッション界のアイコン、アイリス・アプフェル。ホワイトハウスの内装も手がけたという世界随一のキャリアウーマンの人生の極意を描いたドキュメンタリー『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』が、3月5日より公開される。
生き馬の目を抜くと言われるニューヨークで事業を大成功させ、自由に楽しく人生を謳歌する彼女に、本作が作られた経緯や自身のキャリアなどについて語ってもらった。
アプフェル:私が断り続けた理由は、軽薄なファッショニスタとして取上げられたくなかったし、メイズルス氏(本作の監督アルバート・メイズルス)とは顔見知りではなかったから。でも、再三にわたって電話をしてくるので、友人のリンダ・ファーゴ(高級デパート、バーグドルフグッドマンのファッション・オフィスのシニア・ヴァイス・プレジデントでウィメンズ・ファッションのディレクター)に話をしたら、彼女に「断るなんてとんでもない話! メイズルス氏が撮影するといえば誰もが『Yes』と言うほどの人よ」とたしなめられたの。でも、すでに彼には断ってしまっていたし、「どうしよう」と悶々としていた時にまた彼から電話があって、「私のスタジオで会ってほしい」と言われて、ハーレムの彼のオフィスまで会いに行ったの。そこで彼や撮影スタッフに会ったのだけど、皆とても気持ちの良い人たちだったので、出ることに決めたのよ。付き合いが長いというだけで友人になるとは限らないわ。会った瞬間に分かり合える人っているでしょう? 友人とはそういうものだと思うわ。
アプフェル:彼にはスクリプトも何もなくて、私から提案したアウトラインだけで撮影が始まったの。撮影の時、彼はいつも「あなたが何か興味のあることは? 何かやりたいことがある?」と聞いてきて、その時に私が「これこれがしたい」とか、その時興味のあることを彼に言って撮影していくというスタイルだったのよ。この映画の撮影には4年かかったの。お互いに時間が会わなかったり、彼が病気で入院したり,私が手術をしたりしたから。すごく沢山撮影したけれど編集でかなり短くなってしまっています。この映画の部分の他にもまだたくさん撮影した素材があるので第2弾もできるはずだと思うわ。
アプフェル:ホワイトハウスの内装に関しては皆、誤解している部分があるので説明します。私は内装をデザインしたのではなく、ホワイトハウスの内装の修復に携わったのです。ホワイトハウスにはホワイトハウスの外観も内観も建造当時のままを維持する歴史保存委員会があって、私の作業は、その委員会の要望に従って、建造当時のオリジナルを忠実に再現していくことでした。そのため、たとえばカーテンや椅子などの生地は、私たちの会社(Old World Weavers)でオリジナルに忠実に製作し直して使用し、生地の修復を主に行ったのです。それぞれの大統領夫人たちは、自分たちの趣味ではない、とかむちゃくちゃなことを言ってきたり、自分の趣味を押し通そうとしたけれど、ほとんどの夫人は、良い趣味の持ち主じゃないし、ホワイトハウスのインテリアは彼女たちにはどうすることもできないのよ。私がホワイトハウスの修復の仕事を受けた理由は、昔の家や建造物が好きだし、ホワイトハウスの仕事はプレステージが高いし、それに、いつも同じ事ばかりするのは好きじゃないからよ。
アプフェル:特定な人はいないわね。
アプフェル:私はジャンフランコ・フェレの大ファンで、彼が生きていた頃はよく彼の服を着ていたわ。デコラティブな服よりもシンプルで構築的な服が好き。だって私はアクセサリー・フリークだから、 デコラティブでないシンプルな服の方が私の持っているアクセサリーを上手くスタイリングができるの。
シンプルで美しいコートやドレスを作るのはとても難しいことだから、それが作れるデザイナーはとても才能があるしすごいと思うわ。今いるデザイナーでは、ラルフ・ルッチ(Ralph Rucci)、ナイーム・カーン(Naem kahn)、アナ・スイね。アナは素晴らしいデザイナーだと思うわ。彼女の服は私には少し若すぎるけれど。彼女のベストやコートを持っていて着ているわ。カール(・ラガーフェルド)はいいデザイナーだと思うけれど、好きな服の時と嫌いな時があるわね。それから、私はシャネルは着ないの。あの服は何か私じゃないから、着たとしてもとても不自然になるから。
アプフェル:私はいつも何かしていないとダメなの。魚のヒレみたいに。一日中、居間に座って何もしないことほど辛いことはないわ。このクリスマスは(夫の)カールが亡くなって初めて1人で過ごしたのだけど、本当に憐れだったわ。仕事は辛いこともあるけれど、ハードワークであればあるほど私は楽しくハッピーになれる。私にとってハードワークは全ての良薬ね。人がリタイアを考えるのは間違っていると思うわ。
アプフェル:自分自身を知ること。良き友をもつこと。自分の好きなことができること。自分の嫌いな仕事をしなければならないのは悲しいことよね。幸い私は、自分の好きなことをやってくることができたわ。それに、とても素晴らしい結婚生活を送ることができた。でもいつもハッピーだと何がハッピーだか分からなくなるから、時には悲しいことも必要ね。そうすると、ハッピーということはどういうことか分かるから。人の人生には酷いことが必ず起こるもの。家族を亡くしたり、友人を亡くしたり、仕事を無くしたり。私にとって主人を亡くしたことはとても辛いわ。仕事をすることは私にとって、その辛さを乗り越えることでもあるの。だから働き続けるの。
アプフェル:何事もすべてチャレンジだと思っているので、何でも、いつでも全てが私にとってチャレンジ。チャレンジするのが大好き。私は計画を立てて物事を進めたりしないの。私がやりたいと思ったことを提案すると「やりなさい」と言ってくれる人たちが出てきて、それの繰り返しでやってきたから。94歳になった今でも、いろいろな仕事のお声をかけてくれる人たちがいる。そのことを本当に感謝しているわ。
アプフェル:繰り返しになりますが、自分を知ること(Know who you are)、オリジナルであること、そして自分自身で居続ければ、その人ならではのスタイルは自然に生まれてくるのよ。私の展覧会を見た人が私に「あなたの展覧会を見て、他人と同じように服を着るのはやめたわ」と言ってくれたのだけど、それはとても嬉しい言葉だったわ。私の映画からそういうことを学んでくれれば嬉しいわ。
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