1942年1月10日生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。古典的な西部劇からアクション満載のスリラー、バディコメディまで、幅広く手がける監督・プロデューサー。 助監督として『華麗なる賭け』(68年)、『泥棒野郎』(69年)に関わった後、脚本家に転向し、『殺人者にラブ・ソングを』『ゲッタウェイ』(共に72年)、『マッキントッシュの男』(73年)、ポール・ニューマン主演の『ハーパー探偵シリーズ/新・動く標的』(75年)に参加。その後、チャールズ・ブロンソン主演『ストリートファイター』(75年)で監督デビュー。以来、『ザ・ドライバー』(78年)、『ウォリアーズ』(79年)、『ストリート・オブ・ファイヤー』(84年)と熱き男たちのハードな描写の作品を次々と発表。一方、アメリカに実在したジェシー・ジェイムズとその仲間による強盗団の西部劇『ロング・ライダーズ』(80年)がカンヌ映画祭の正式出品に選出され、世界的にも注目される。『48時間』(82年)でアクションコメディのセンスも披露し、また『エイリアン』シリーズでは製作総指揮として参加している。
性転換手術で“大事なもの”を奪われ女にされてしまった殺し屋が、復習に立ち上がる姿を描いた『レディ・ガイ』。ハリウッド随一の男前女優ミシェル・ロドリゲスが異色の主人公を演じた話題のR15+映画が公開中だ。
監督は、『ストリート・オブ・ファイヤー』『48時間』などを手がけたアクション映画の巨匠ウォルター・ヒル。彼に、本作について語ってもらった。
監督:非常に興味深い質問ですね。まずこれが女性の主人公であるか、ということは考えなければならないね(笑)。フランクは無理やり女に変えられ、マインドの中では男であり続けるわけで、男が特異な状況で生きていくということを描いている。だから女性が主人公というのはまた違うかもしれないね。
つまり、女だから男だからという観点で作品を選んでいるわけではなくて、自分に訴えかける何かがあるか、惹かれるものがあるかという観点で作品選びをしています。現に今手がけようとしている作品は女性2人が主人公だったりもしますしね。
ただ、今まで手がけた作品は男性が主人公の作品が多いし、ある種の行動規範を持った男がにっちもさっちもいかない状況の中で、時代遅れというかうまく適用できないという状況を描いているのだと思います。
私が掲げているセオリーとして、いい物語、いい映画というのは涙で終わると思います。コメディであってもね。
監督::当初からミシェルを想定していたわけではなく、最初はやはり男性に演じてもらおうという考えもあったのでいろんな俳優と話していたのですが、最終的には、男優が演じると“手術後”が大変でメイクが目立ってしまい、メイクだけに意識がいってしまうのではと思って女性を配することにしました。
それと、女優に“マインドが男性の女”を演じさせたほうがチャレンジングだと思ったんです。より深いものが見れるのではと思って、女性をキャスティングすることにしました。
その決断をしてから、(シガニー・ウィーバー演じる)医者役の方を決めていくにあたり、こちらも元は男性の役だったのですが、女性にしました。男の外科医であれば、よくある狂った科学者、ありきたりな役になってしまうと思い、こちらも女性にしたほうがいいと思いました。
ということで、2人とも女性になったわけです。ですから、最初からミシェルとシガニーを想定していたわけではありません。
監督:ミシェルもシガニーも2人ともやりやすかったですよ。シガニーとはもう40年以上ずっと友だちでいるのだけど、ミシェル・ロドリゲスとは本作で初めてお会いしたわけです。非常に気さくな人で、いわゆるストリート育ちだからやっぱりこの役には合っていました。理屈をこねたりするタイプではなく、とにかくやろう!というかんじで、とっても気さくな付き合いやすい女優です。
監督:あまりメイクに意識がいってほしくなかったので、手術のシーンはなるべく短めにしました。手術を終えて包帯をとったときに「あぁ、ヒゲがなかった」というようなところがひとつのポイントなんですけれども、ダラダラとはやりたくなかったんです。
それから、これは僕が言っていいものかわからないのですが、男性器が見える特殊メイクをしますよね。これはミシェルのリクエストで「なるべく大きいモノを作ってくれ」と言われたので、彼女の願いを叶えてあげました(笑)。
監督:とにかく狂った科学者一辺倒にしたくなかったので、同情を禁じえない要素を大事にしました。非常にコミックブック的な奇抜な設定のストーリーですけれども、なるべくリアルに見えるようにアプローチしてもらえるように演出しました。僕がひたすらセリフを書いて、彼女がひたすら演じているんだけど、やはりさすがに優秀で、いろいろな御託を並べる独白のシーンもうまくやってくれました。こういう背景を持った人だから、かわいそうだなとも思えると思うんですね。非常に聡明な女優さんでした。インテリなんだけれども相当道を踏み誤ってしまったキャラクターであるわけですけれどもね。
『ハンニバル』のレクター博士とあえて比較すると、レクター博士は、人間ってしょうもないという皮肉的な目で見ているが、本作のドクター・ジェーンは非常にまっすぐなんですね。私は正義を実行するんだ、と。実際にブラック・マーケットで手術をしたりして、人を救っているんだという考えを持っているんですね。そういう部分がレクターと全く違うと思います。
監督:フランク・キッチンのバックグラウンドに関してはそんなにつまびらかにする必要はなく、ちょっとミステリアスなキャラクターに仕立てました。なので、スペイン語をしゃべってもらうのもひとつの工夫で、当然ながらヒスパニックの環境の中で育った人だろう、でもどういう背景なのかいまいちわからない……そういったミステリアスさを醸し出したかったんですね。
キャラクター描写に関してもうひとつ言うと、犬をかわいがるところなどがあり、普通だったらこういったベタな設定は避けるのですが、この作品だったらできるかなと思って、あえてやってみました。悪党は悪党でも、女として生きていくという経験の中で少しずつ人として良くなっていく。カトリックの神父になるというような善人ではないけれど、少しばかりは良い人間になってくる様子が描かれてきます。
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