2006年、カナダ・バンクーバー生まれ。13年、『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』で映画デビューし、映画やTVドラマに出演。15年に、ブリー・ラーソン主演の『ルーム』で彼女の息子役を演じて大ブレイク。同作で放送映画批評家協会賞若手俳優賞、ナショナル・ボード・オブレビュー賞ブレイクスルー演技賞を受賞、全米映画俳優組合(SAG)賞助演男優賞にノミネートされた。その後『ソムニア –悪夢の少年- 』(16年・未)、ナオミ・ワッツと共演の『Shut In』(16年)、再びワッツと共演の『The Book of Henry』(17年)に出演。最新作はグザヴィエ・ドラン監督の『The Death and Life of John F. Donovan』(原題)。
『ワンダー 君は太陽』ジェイコブ・トレンブレイ×スティーヴン・チョボスキー監督インタビュー
思わず涙がこぼれ落ちる感動作の名子役&監督を直撃!
生まれつき顔に障害のある少年オギーが、10歳にして生まれて初めて学校に通うことになる。『ワンダー 君は太陽』は、同年代の子どもたちから遠慮ない好奇の視線を浴び、いじめや裏切りも経験する少年の物語。くじけそうな心を、家族の愛に支えられて勇気に変える主人公オギーを演じたジェイコブ・トレンブレイ、スティーヴン・チョボスキー監督が来日した。ブリー・ラーソンがアカデミー賞主演女優賞受賞の『ルーム』(16年)で彼女の息子役を演じた記憶も新しいジェイコブは現在11歳。テーブルの上に、前日のTV出演でプレゼントされたという手裏剣を置き、ときどきお守りのように触りながら、監督と2人で話してくれた。
トレンブレイ:楽しかったです。『ルーム』のような作品だと、他の子役とお仕事する機会はほとんどないから。大勢の人がいて、お昼休みも同世代の子がたくさんいたからとても楽しかったです。
トレンブレイ:(親指を下げて見せつつ、ジョークでブーイングのアピール)そんなことないでしょ。(監督に)答えに気をつけてね。ちゃんと聞いてるから(笑)。
監督:(笑)全然大変ではなかったです。子役との仕事で最大の難関は労働時間。組合があり、法的に時間を超過して仕事をさせられないという制約があります。それを除けば、子どもたちはインスピレーションを与えてくれるし、楽しい。リアルで、作ったところがない。最高の体験でしたね。
監督:まさにそういう体験をしてもらいたいと思って作りました。目指したのは、僕が本を読んだ時の体験を映画化すること。友だちに薦められた本を読んで、自分もその物語を素晴らしいと思ったら、それを世界に知ってほしいと思う。そういう気持ちです。
監督:それは映画に全部入れました。こういうことがありました。原作者のR・J・パラシオと一緒に質疑応答をした時、参加者からこんな質問を受けました。「原作にあって映画の中になかった部分で、ここがあればよかったのにと思った箇所は?」。原作者は「そんなシーンあったかしら?」と。その時、僕はきちっと自分の仕事を全うできたと実感しました。
トレンブレイ:それはないかも。ただオギーとの共通点はいくつかあります。『スター・ウォーズ』が大好きなこと。家族が大好きなこともそう。それから大好きな犬を飼っていて、『スター・ウォーズ』のキャラから名前をつけたこと。そして一番重要なのが、人に対して優しさと親切心をもって、平等に接してほしいと思っているところ。まるで、原作者が僕に当書きしてくれたように思えるくらい近しいし、ある意味同じ人間だから、ずっとオギーは僕の中に生き続けると思う。
監督:ちょっとジェイコブに聞いていいかな?『ルーム』は、クラスメートたちは見てないよね。
トレンブレイ:見た子も何人かはいるみたい。
監督:『ワンダー』は、学校で上映したの?
トレンブレイ:学校はお休みの時期だったけど、みんなで劇場に見に行った。僕も一緒に行けた。
監督:それは良かった。
トレンブレイ:そういう制約は感じませんでした。意外に特殊メイクって薄くて、表情を作ることもできるし。メイクのおかげで、自分の想像力をより使ってオギーになることができました。
トレンブレイ:最初3時間半はかかるはずだったのが、僕は子役で子どもの労働時間が限定されてるから、メイク担当の人がまず2時間まで短縮して、最終的に90分まで短くなったのは良かったです(笑)。その毎日のプロセスも、オギーになるために役立ちました。ちなみに取るのは20〜30分ぐらい。
監督:やはり僕自身もアウトサイダーだという気持ちがどこかであるからです。ただ僕はアスリートでもあったので、学校では友だちも多い方でした。だから、はみ出し者と人気者の双方をつなげるのが自分の役割と感じていました。人生で学んだことの1つが、人々には差異よりも似てる部分が多いということです。
監督:原作を読みながら、これを映画でも描きたいと思ったのは、人はいかに自然に勝手な先入観を持つかということです。国でも性別、年齢でもなんでも。簡単に他者について決めつけてしまう。この原作は、そういった部分を超えて、その人は誰であるかということを見せてくれます。全ての人にそれぞれのストーリーがある。人生まさにそうだと思うし、こうして旅をして、新しい文化に触れるたびに毎回感じます。自分の仕事を通して、よりみんなが一つになれることに少しでも役立てるのは光栄です。
監督:たった2語ですが、みなさん「親切(kind)」の方に目がいきがちですよね。でも僕は「選ぶ(choose)」という言葉がとても好きです。だって、選ぶということに力は宿っているのだから。この映画を作り、このメッセージに寄り添う形で生きてきて2年経ちますが、僕自身が素晴らしい人生を生きていると感じています。とはいえ、日常生活でフラストレーションを感じることはあるわけで、そのたびに妻に言われます「忘れないで。怒っちゃ駄目よ」って(笑)。
トレンブレイ:みんなに優しく接するのは世界で最も簡単なことの一つだと思う。スマイルするだけでできることだから。1人ぼっちでいる子に「仲間にならない?」と言うだけでいいから、簡単だと思うんだけど。僕は学校でよくサッカーをやるけど、一緒に遊びたいという子がいれば、入ってもらいます。だって、誰だって友だちになれるはずだから。
監督:監督は映画の最初の観客でもあります。監督の喜びの一つは、彼のような抜きんでた才能に驚かされること。その瞬間はたくさんあったけど、これぞジェイコブ、と思ったのは、ある事件が起きて、オギーの父親が悲嘆にくれるシーンでした。実は父親役のオーウェン・ウィルソンの撮影最終日に、急きょ撮ることにしたんです。セリフは全くなくて、ジェイコブが入ってパパの背中をポンと叩いて、ただ2人そこで座る。あのシーンには本当に感動したし、驚いた。話すだけでもこみ上げてきます。ジェイコブは本当に素晴らしい。ユーモアのセンスがあって、感動させてくれる。例えば卒業式のシーン。壇上に立って投げキスを始めたりするのは、たとえ本編でカットされたとしても、ジェイコブのそういう精神がこの映画の中に入っています。
監督:素晴らしかったですね。僕はジュリアのファンで、オーウェンも大好きだし、マンディ・パティンキンのような伝説的な役者が「校長先生? うん、いいよ」と引き受けてくれたり、ソニア・ブラガが祖母のシーンを撮るたった1日のためだけに来てくれたり、本当に恵まれていると感謝の気持ちしかないです。原作の力が大きいと思います。それから、チューバッカのことも忘れちゃ駄目だよね。プロデューサーがディズニーと長年仕事をしているおかげで、キャスリーン・ケネディに原作と脚本をお送りして、検討をお願いしたら快諾してもらえました。
トレンブレイ:めっちゃ楽しかったです。『スター・ウォーズ』に出演するのは僕の夢の一つでもあるんだけど、それに一番近づけた瞬間だったから。
(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)
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