1970年5月21日生まれ、テキサス州出身。俳優としてキャリアをスタートさせるも、アメリカとメキシコ国境の麻薬戦争の実態に切り込んだ『ボーダーライン』(15年)で脚本家としてデビュー。また、作品賞を含むアカデミー賞4部門にノミネートされた『最後の追跡』(16年)の脚本も担当。『ウインド・リバー』は、『ボーダーライン』『最後の追跡』と共に現代アメリカのフロンティアを描く3部作の最終編。その他、『ボーダーライン』の続編『Sicario: Day of the Soldado』(18年)の脚本を手がけたほか、ケヴィン・コスナー主演のテレビシリーズ『Yellowstone』(18年)では監督、脚本を兼務。
麻薬戦争の実態に迫った『ボーダーライン』、不況にあえぐ田舎町を舞台にしたクライムドラマ『最後の追跡』など骨太な社会派作品の脚本を手がけ高評価を受けるテイラー・シェリダン。彼が初めて監督をつとめたのが、人種差別を背景にアメリカの闇を描いた『ウインド・リバー』だ。ネイティブアメリカン保留地の荒れ果てた土地で起きた殺人事件を軸に、大国が抱える深刻な問題が浮かび上がってくる。
ニューヨーク・タイムズが「一流」の太鼓判を押し、Rotten tomatoesでも満足度87%を獲得、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門では監督賞を受賞した本作について、シェリダン監督に話を聞いた。
監督:本当に過酷でした。撮影監督のベン・リチャードソン、その他のカメラマンにとっても本当に過酷だったと思います。撮影し終えること自体がチャレンジでしたね。私たちがたどり着いた手法はとても難しいものでした。雪のため、物理的な限界があると分かっていましたので通常の映画のようにドリー(カメラを乗せる台車)やステディカム(カメラを安定させる装置)は使えないし、その他様々な器具も使えない。基本的に手持ちです。雪の中で。だからカメラを雪の中にいる動物の視線のように扱えないかと考えたんです。リスキーなアイデアだとも思いました。手持ちカメラは時に見苦しくなることがあるからです。でも見事にやってくれました。
監督:世の中には語られなければならない物語があります。生きていく上で素晴らしいことの一つに、物語が映し出すものを社会に反映することがあり、願わくはそれが何らかの変化を起こすことができればと思っています。しかし、エンターテイメントという側面を忘れてはいけません。つまるところ、それが私の仕事なのです。観客を楽しませることが真っ先に来なければなりません。誰も、わざわざお金を払って説教くさい映画を見たくはありません。だから私の仕事は観客を楽しませることなんです。その過程で知られざる問題に光を当てることができれば、よりその体験が力強いものになると考えています。
監督:役者には恵まれていると思います。ベニチオ・デル・トロ、エミリー・ブラント、ジョシュ・ブローリン。ベン・フォスターにクリス・パイン。そしてジェフ・ブリッジス。ジェレミーのパフォーマンスも完璧でした。
監督:我ながらコリーに関しては無茶な設定をしたと思います。いかにもアメリカ的なカウボーイ風の男なのに、感情を吐露する場面が多いんです。カウボーイが泣くなんてあまり見ませんよね? 下手にやれば暑苦しくなっていたと思います。でもジェレミーは絶妙に抑えた演技でリアルに見せ、素晴らしいと感じました。
監督:彼女は精神的にも肉体的にもとてもタフな女性です。実際に会うとその精神力を感じられるんです。はじめ観客はジェーンを世間知らずでナイーブな新人だと勘違いするかもしれません。でも実際は無垢な新人ではいられないし、事件を解決できる存在だと信じさせる強さが必要です。25歳の新人FBI捜査官ジェーンを演じる上での難しさはそこにありますが、彼女には事件に立ち向かう力を感じさせる強さがあります。
監督:とてもアメリカ的な物語ですが、必ずしもアメリカ人の観客の共感を得られるとは思ってはいませんでした。でも共感が得られたので、ありがたかったです。ヨーロッパの観客に見せる上での気がかりは、映画として理解してもらえるかどうかでしたが、通じたようで感激しました。
監督:どんな映画でも、進んで丸裸になる覚悟がいると思います。エモーショナルであること。また、観客を信じなければいけません。それが、私がやろうとしていることです。できるだけ正直に向き合っているのです。
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