1979年11月19日生まれ、アメリカ・フロリダ州マイアミ出身。『Medicine for Melancholy』(08年・未)で長編デビューし、ニューヨーク・タイムズ紙のA・O・スコット選で2009年の最優秀作品に選ばれ、13年にはニューヨーク・タイムズ紙の“世界の映画界で見るべき20人の監督”の1人に選出された。長編2作目となる『ムーンライト』(16年)が、第89回アカデミー賞において作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞。黒人だけのキャスト・監督・脚本による作品での作品賞受賞は史上初となる。今後は、米作家コルソン・ホワイトヘッドによるピューリッツァー賞受賞小説をドラマ化する、アマゾンの新リミテッドシリーズ『The Underground Railroad』が控えている。
昨年度アカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督の新作『ビール・ストリートの恋人たち』は、70年代のニューヨークを舞台に、無実の罪で引き裂かれた恋人たちの愛の物語だ。
公民権運動活動家にして、アメリカ文学に名を残す黒人作家、ジェイムズ・ボールドウィンの小説を映画化。レジーナ・キングがゴールデン・グローブ賞助演女優賞を受賞したほか、ロサンゼルス映画批評家協会賞作曲賞などを受賞、高い評価を得ている。
本作の映画化をずっと夢見ていたというジェンキンス監督に、映画に込めた思いを語ってもらった。
監督:最初にボールドウィンを意識したのは、「ジョヴァンニの部屋」と「次は火だ」だった。これらの小説を読んだことが、男らしさとは、また黒人の男らしさとは?ということを考えるきっかけになったんだ。彼の文章そのものではなく、研究してきたこと、観察してきたことの深さによって彼自身が浮き彫りになる手法に感銘を受けた。彼の遺産はとても豊かで大切なものだ。なぜなら、真実を描いた作家だから。ボールドウィンの力は、人々が共感できる物語を作り上げたところにあると思う。人はそれを“普遍性”と呼ぶのかもしれないが、彼は異なるインスピレーション源を元に物語を書いているから説得力があるのだと私は考える。ハーレム、フランス、トルコなどに住んだ経験の融合が、彼を唯一無二の作家にしたのではないかと思うんだ。
監督:2009年から10年ごろに初めて読んだんだ。私は“ボールドウィン教”の信者だったが、この作品だけは読んでいなかったんだよ。最初から、ティッシュとファニーの純粋で豊かで活き活きとした恋愛物語は映画にできるかもしれないと思いながら読み進めていたよ。ボールドウィンが育ったハーレムのコミュニティで描かれる黒人の恋愛とは違う視点で描かれているから。ある意味で異議を唱える小説だったんだ。
2013年に、自分自身をどこかに缶詰にして脚本を書き上げるべきだと考えた。小説のありのままをスクリーンに写すために、この小説を初めて読んだときの思いを翻案したいと思ったんだ。ほんの少しの生活費を持ってヨーロッパに渡り、ブリュッセルで『ムーンライト』を、そしてベルリンで『ビール・ストリートの恋人たち』の脚本を書き上げた
監督:この小説は1974年に出版されているが、現代に起きていることにもとても通じているんだ。そのため、脚本は70年代初頭が舞台になっていて、その時代を妥協なく描くことが私たちのボールドウィンへの敬意を表すことになると考えた。ボールドウィンは、彼が生きた時代を超えて生きる作家だ。彼は人間の条件について書き、地球上に人間が存在する限り、彼が立ち向かった問題は現代社会とつながりを持つだろう。
監督:そこが最も腐心した点だよ。その二つは真逆のものとして存在するからね。まさに、ボールドウィンの二面性を複合させたようなもので、ティッシュとファニーの愛の純粋さと尊厳が、アメリカの抑圧されたシステムによって奪われたこと、そして彼らにとってそれがどんなものあったのかを描いている。「次は火だ」を読み受けるパワーがロマンスに組み合わさったようなものだね。
監督:ボールドウィンの小説に、そしてハーレムの街に敬意を示すためにね。準備中は、自分のアパートメントの部屋の壁にたくさんの資料用写真をまるで壁紙のように貼っていた。小説とティッシュとファニーから受けた情熱に浸りたかった。キャスティングやロケーションを探している間に、映画のリズムみたいなものができあがる。イメージボードのようなものを作らなかったのは、どんな映画を作りたいかがその時期にとてもクリアになったからだ。
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