1991年4月5日生まれ。東京都出身。バンド「The SALOVERS」やソロアーティストとしての活動後、バンド「2」を結成し、1stアルバム『VIRGIN』、2ndアルバム『GO 2 THE NEW WORLD 』を発表。『日々ロック』で俳優デビュー後、これまでにドラマ『この世界の片隅に』(18年)、映画『九月の恋と出会うまで』(19年)、映画『ハッピーアイランド』(19年)などに出演してきた。父はフリーアナウンサーの古舘伊知郎。
銀杏BOYZのボーカルで役者としても活躍している峯田和伸が、連続テレビ小説『ひよっこ』などを手掛けた脚本家・岡田惠和と共に紡いだ物語を映像化した映画『いちごの唄』。7月5日より全国公開を迎える本作でW主演を務めた古舘佑太郎と石橋静河にインタビューを行い、ハプニングもあった撮影の舞台裏、芝居の楽しさを知ったときのことなどについて語ってもらった。
古舘:まず最初に、大好きなお二人だからこそ、その世界も好きだからこそ、ちょっと大げさに言うとプレッシャーじゃないですけど、自分が体現できるのかという思いがありました。でも、とてもうれしいという気持ちは、もちろんあったんです。音楽から派生する映画では、ミュージシャンを題材にした作品はありますけど、楽曲の世界観を描く作品って、なかなか聞いたことがなかったので、どんな風になるんだろうという不安も入り混じっていましたね。
石橋:最初に脚本を読んでから、岡田さん、監督、プロデューサーの方にお会いして、色々なお話をしたんですけど、まず脚本が本当に面白くて。純粋にこの作品をやりたいなと思ったし、その時は峯田さんにはお会いしていないんですけど、岡田さんとお会いしたときに、すごく素敵な方だったので、こういう方が書くと、こういう作品になるんだなと思いました。峯田さんの音楽は、出演が決まって、撮影する前からずっと聞聴いていました。自分自身もすごく救われましたね。
古舘:何を大事にするかがブレブレな時期もいっぱいあって、その都度で変わっていったので、こ最初から決め打ちで最後まで続けられたわけじゃないんです。いろいろ考えたしブレブレだったけれども、最終的には、この物語の尺の中で描かれるのは、コウタ自身の成長期ではないなと思いました。
コウタ自身は、常にいい意味でバカだし、いい奴。それが貫徹されていると思っているんですけど、そこであーちゃんの感情の変化や成長期が描かれたりする。個性的な他のキャラクターたちの間にコウタがい続ける。僕がいろいろ考えたり悩んだりするあの時間も大事だったけど、それ以上に、何も考えず目の前で一緒にお芝居してくれている人に素直に返事したり、リアクションしたりしようという方向に変わっていきましたね。
古舘:直接的にどうなのかはわからないんですけど…撮影が始まる直前、僕が石橋さんと峯田さんに教えてもらったというか。コウタはお二人にもらったキャラクターだったんです。それまでのブレブレは、お二人のヒントがある前の話なんですよ。直接的に響いているかは分からないですけど、あの時間がなかったら……。
例えば、石橋さんと最初に本読みをしたとき、僕はすごく「やった!」と思えたんです。もしそれまで悩んでいなかったら、それは普通の本読みじゃないですか。でも、僕が悩んで悩んだからこそ、すごく「やった!」という手ごたえを持てたんです。僕はコウタとしてあーちゃんを劇中で神格化しているんですけど、女神みたいなイメージは、本読みから石橋さんに対して思っていたことでした。自分が苦しんでいたときに救世主みたいな感じで現れてくれた。
石橋:ふふふ(笑)。
古舘:ルンルンで、何も悩みもなくて、役作りが充実していたら、女神降臨になっていないと思うんですよ。女神って、苦しい所に現れる存在なんです。そういう意味で言うと、悩んだことは必要な苦しみだったのかなと思います。
石橋:あーちゃんは、抱えているものがすごく大きかったんですよね。キーワードとして、いくつか色々なことがあったということは脚本に書かれているんですけど、実際にはコウタの視点から見たあーちゃんが描かれていることが多いんです。だからまずは、コウタから見た魅力的な、女神のようなあーちゃんになれるように出来たらいいなと思いました。
でも、それだけじゃなくて。あーちゃんが気持ちを吐露するシーンがあり、そこを演じるために、あーちゃんのバックグラウンドがどういうことなのかは、じっくり考えました。すごく孤独な作業ではあったんですけど、撮影するとなると、いるだけでウキウキしてくれる人(=コウタ)が横にいるので(笑)。物語の途中、あーちゃんがコウタのそういった部分に対して、ばーって言うところがあるんです。嬉しさ反面、複雑な気持ちがあるという、あーちゃんの気持ちは分かるなあと思いました。
古舘:(石橋に)何か喋りました?
石橋:峯田さんが描いたあーちゃんの絵があって。それがすごく好きだったし、役作りの手掛かりになっていたんです。その絵のことを聞こうと思って話しかけたら、全然こっちを見てくれなくて(笑)。(下を向きながら)こういう感じで「っす…っす…」みたいな感じで、すごくシャイな方なんだなと思いました(笑)。
古舘:撮影が始まる前に、メールで「お会いしたいです。お話を聞きたいです」と送ったことがありました。そうしたら、返ってこなかったんです。本当は撮影前にお話を聞きたかったんですけど、峯田さんは敢えて言わずにいてくれたらしいんです。だからメールも無視したらしいんですよ。峯田さんは「なんでかっていうと、事前に会うと佑太郎くんは、意識して銀杏BOYZの世界観だったり原作に寄せようとするでしょ?」と仰っていました。
確かに、そこでずっと悩んでいたんです。でも峯田さんは「本来は俺のことなんか無視していい」と。銀杏BOYZの楽曲とか峯田さんとか、そういうものに対して「全く気にせず、好き勝手やってほしいから」という風に仰ってくれて。石橋さんと出会ったことで、ちょっと自信につながったことが「よし、これで行ける!」という確信に変わったというか。僕の中で、第二のコウタ像構築のタイミングでしたね。
古舘:僕はバンドをやっていて、何度か「お芝居、やってみたら?」と声をかけていただいたことはあったんですけど「絶対無理だろう」と思っていました。言っていただけるのはうれしいんですけど、自分でやるなんて思っていなかったんです。でも僕は『日々ロック』というバンド漫画と、入江悠監督が大好きだったんです。ある時、僕が当時所属していたレーベルで「『日々ロック』を入江監督が映画化する、バンドマンを探している」というお話を聞きました。
どちらも大好きだったので、今までそんなことやる・やらないって考えたことないくらいだったのに、大好きだからこそ飛び込みたくなっちゃったんです。「お芝居をやりたい!」と思って、会社の人に応募してもらいました。そうしたら、入江監督に僕らのバンドを選んでいただけて、出演したのが最初でした。
その時も、別にこのままやっていくなんて考えてもいなかったです。バンドメンバーと一緒に出て、バンドの役だから、演じるとか以前の段階だったんですね。でも、最初が入江監督で本当に良かったなと思うのが、僕らは常にストーリーが動く少し後ろにいる奴らの役だったんですけど、そこに関して一回も演出を付けられなかったんです。「ここは古くんが自分たちで全部好き勝手やってほしい」と。「古舘座だ!」みたいに(笑)。蛭子能収さんと僕らが一緒だったんですけど、本当に自由にやっていました。僕が全員に、素人の演出を付けて、蛭子さんも「分かりました」とか言って、やってくれるんですよ(笑)。
それをみんなが面白がってくれてたんです。「あ、車だ!」「あ、空だ」とか、目に見えたものすべてを口にするというのをやっていたんですけど、それを褒めてもらえた。最初がそれだったので、めちゃくちゃ楽しかったですよね。だからそれ以降も、お芝居のお話を頂いたときは「あ、やってみよう」って、そう思うようになったきっかけです。
石橋:私はお芝居を始めようと思う前に、コンテンポラリーダンスをやっていて。ある振付をやったときに、それがすごく変わった振付だったんです。コンテンポラリーダンスって、自己表現の延長みたいなところがあって、自分という部分がけっこう強いんですけど、これを自分が踊ると思うと、すごく恥ずかしいなと。「出来ないなあ」と思ったときに、「これは自分じゃなくて、誰か違う人だと思ってやろう」と思ったんです。
その振付には全くストーリーがないんですけど、自分の中で、「ここはこういう感情で、次はこういう感情だから、こういう動きになるんだ」とか、頭の中で作ってみたんですよ。そうしてみたときに、自分では全く行けないような感情に行けた気がしたんです。それがすごく不思議な体験で、面白いなあと思って。なんとなく、そのときにお芝居する感覚って、こういうことなのかな?と思ったので、それが原体験に近いのかなあ。
石橋:私は、人ではないんです。自分に本当に自信がない状態から、お芝居で役をいただくことがあったので、今も本当に手探りでやっているんですけど、音楽に救われることが多いですね。自分の中でその作品のテーマソングがあったりします。勝手に決めるんですけど、その曲の感じから、「こういうことなのかもしれない」と気づいたりとか。
石橋:まったく別ですね。自分が脚本を読んだりしていて「なんか、この曲近い気がする」って思ったものをずっと聴いたりしています。
古舘:救われたというか、コウタにとってのあーちゃん像に近いなと思うのが、僕は初恋を異常に 引きずっていたんですね(笑)。でも、大人になれば変わるじゃないですか。十何年も前の話ですから、気持ちも薄れていくというか。僕も、もう大人になっているわけで、この二〜三年くらいでは、友だちが結婚していく。その結婚式で、その初恋の子に会うケースが何度かあったんです。
その子に会うたびに、好きとかではないですけど、自分の原点みたいなものを感じるんですよ。表現としての。そこで「昔は良かったね」とか「俺らも大人になったし」とか、言えればいいじゃないですか。言えないんですよ!会ったら「挨拶が遅れてごめんなさい」と言って立ち去っちゃったり、3分間汗だくになりながら喋って終わるとか、異常なことになっているんです。
石橋:あはは(笑)!
古舘:その子に会うと、忘れてた原点に戻るんです。そこで「僕も大人になれた」と感じたら、たぶん表現者としてお終いだと思うんですよね。その子がきっかけで始まっている部分もあるので。僕はその子を師匠って呼んでいるんですけど、師匠に会うと、その頃の感覚が蘇る。好きとかではないけど、まともに喋れないと思うと、表現者として「まだいけるな!」みたいな。そんなことを思った、という話です(笑)。
(text&photo:岸豊)
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