メキシコ・シティ生まれ。12歳でアメリカに移住し、チャップマン大学のフィルム・スクールに入学。数々のアーティストのミュージックビデオを手掛け、メキシカン・ポップ・バンド「Jesse & Joy」のミュージックビデオで、ラテン・グラミー賞を史上最年少で受賞した。2015年に自身初の短編映画『Identity Theft』を監督。『ブラインドスポッティング』(18年)で長編監督デビューを果たした。
『ラーヤと龍の王国』ドン・ホール&カルロス・ロペス・エストラーダ監督インタビュー
バラバラになった世界をひとつに、ラーヤと龍の冒険ファンタジー
でも、この映画の最後は泣かせるんだ/ホール
ディズニー・アニメーション最新作は、邪悪な魔物によって“信じあう心”を失った「龍の王国」をめぐるスペクタクル・ファンタジー。魔物のせいで父を失い、たった一人で生きてきたラーヤは、バラバラになった世界を再び一つにするため、伝説の“最後の龍”シスーを追う。だが、ようやく見つけ出したシスーは他人を信じすぎる性格で、肝心の魔法の力を失っていた。ラーヤはシスーと共に、魔法を取り戻すことができる5つの龍の石を探す旅に出る。
日本でも大ヒットしたディズニー映画『ベイマックス』のドン・ホールと、インディーズ映画でデビューしたカルロス・ロペス・エストラーダ。経歴の異なる2人の監督がディズニーでの仕事について語ってくれた。
エストラーダ:子どもの頃はディズニーが大好きだったけれど、自分が今日こんなところにいるなんて、当時は想像もしなかったよ。いろんな偶然が重なったんだ。スタジオが新しいフィルムメーカーを探していて、それがちょうど『ブラインドスポッティング』が公開された年。ディズニーは僕の映画をサンダンス映画祭で見て、一緒にお茶をしようと誘ってくれた。それで2年前に参加することになったんだ。
『ラーヤ』はディズニーでの初めてのプロジェクト。ここではたくさんの素晴らしい人たちに出会えた。ドンは最初から僕を歓迎してくれた人のひとりで、社内を案内してくれて、僕にアニメーションの世界を紹介してくれたんだ。『ラーヤ』は、僕のインディーズ映画のバックグラウンドを活かす意味でもパーフェクトだったよ。本作で僕らは新しいことをたくさん試したし、僕は自分のアイデアをたっぷり言った。ドンも多くのアイデアを持っていたよ。僕はここでフィルムメーカーとしてすごく成長させてもらったと感じているし、本当に自分自身を作品に反映させることができたと思っている。
エストラーダ:監督をする、映画を作る、というのは根本的に同じなんだよ。一つひとつのシーンを見て考えるのも、役者と話をするのも、変わらない。使うツールと機械は違うけどね。テクニカルな面については、学ぶことがたくさんあった。でも、ドンやキュイ(・グエン、脚本家)と仕事をしてみて、僕らのバックグラウンドはとても違うのに、僕らは同じ言語を話すんだとわかったよ。僕らのバックグラウンドがユニークであることが、『ラーヤ』をほかと違う映画にしてくれていることを願う。
ホール:本当にその通りだよ。バイデンの言うことを聞いて、僕も「これ、僕らの映画と同じじゃないか」と思った。バイデンのスピーチライターはキュイだっけ?なんて(笑)。
エストラーダ:僕の反応もまったく同じだった。映画を全部見てもらったら、ラーヤの父ベンジャがあのスピーチと同じイデオロギーを持っていることがわかるよ。あのスピーチにはこの映画が語ることのすべてがあった。
ホール:いや、彼らは喜んでいたよ。素手での殴り合いとか、剣を使った戦いとかは、僕らがあまりやらないことだから。アニメーターはすごくエンジョイしていたと思う。コレオグラフィーを学ぶミーティングとかも楽しんでいたように見える。普段あまりやらないことだからさ。
ホール:それを言うとネタバレになっちゃうんだよね。そうやってみんなに映画のチケットを買わせようとか(Disney+の)会員に登録させようとしているわけじゃないよ(笑)。でも、この映画の最後は泣かせるんだ。『ベイマックス』みたいに。さらに今作には、大規模なエピックの要素がある。これは僕らがこれまで手掛けてこなかったような、壮大なスケールの映画だ。そこに人と人との密接なシーンもあって、最後にすべてが一緒になる。すごく満足のいく形で。僕らは何度も映画を見たが、今もまだ感動するよ。慣れてしまったというのはない。いつ見ても、すごく心が動かされる。巨大なスケールの映画で、細やかな人の心を描くという難しいことを、自分たちは達成できたんだと思うよ。
エストラーダ:僕らが実際に生きている世界、そこに住む人たちを描こうという努力は、意識してやっていることだと思う。だからといって、ラーヤはその理由だけで生まれたわけじゃないよ。僕らが関わったほかの映画でも「これは多様性の条件を満たしているか?」なんてチェックが入るわけではない。ディズニー映画は、自分が行ったことのない世界に連れて行ってくれて、よく知らなかった文化を体験させてくれ、そこにいる人たちに会わせてくれる。ディズニーはこれまで世界のこの部分(東南アジア)をちゃんと扱ったことがなかったから、僕らは喜んでそこに飛び込んでいったんだ。その文化を、みなさんと分かち合えるようにね。
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