[未公開映画祭]あの無謀男が世紀のお尋ね者捕獲に挑む『ビン・ラディンを探せ!』
現在、インターネット上で開催中の『松嶋×町山 未公開映画祭』。アメリカで作られた日本未公開の39本の厳選ドキュメンタリー映画をVOD配信している。
キリスト教福音宣教会のフィッシャー女史が主催する子どものサマーキャンプを追う『ジーザス・キャンプ〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜』、保守派の根強いテキサスで育った少女が地域の性教育や同性愛者の捉え方に疑問を投げかけていく姿を追う『シェルビーの性教育〜避妊を学校で教えて!〜』など、アメリカの今を切り取った選りすぐりの問題作がズラリの『未公開映画祭』。そのなかから、今回は『ビン・ラディンを探せ!〜スパーロックがテロ最前線に突撃!〜』を紹介しよう。
[動画]『ビン・ラディンを探せ!』予告編
『松嶋×町山 未公開映画祭』特集
監督はモーガン・スパーロック。『スーパー・サイズ・ミー』で、1ヵ月間マクドナルドのファーストフードだけを食べ続けるという「苦行」に、体を張って挑戦したあの監督だ。その体当たり手法は今回も健在で、危険をものともせず、世界のお尋ね者、オサマ・ビン・ラディンを探し求めて中東を駆け巡る。
そもそもスパーロック監督がこの映画を撮り始めたきっかけは妻の妊娠。生まれてくる子どもが安全に暮らしていける世の中にするために、テロを拡散させた悪の元凶を、頼りにならない政府や軍隊に代わって引っ捕らえ、安全を取り戻そうと思ったのだ。出産予定日まであと19週間! 果たしてスパーロック監督は、無事に帰国し、愛する妻の出産に立ち会えるのか!?
「敵」の行方を探るには「敵」の気持ちを知る必要があると考えた監督が、まず向かったのが、ビン・ラディンの師、ザワヒリの故郷エジプト。だが監督は、アメリカから巨額の援助をもらい、友好国であるはずのこの国で、アメリカ人はあまり好かれていないことを知る。
さらに、モロッコ、イスラエル、パレスチナ、アフガニスタンなど中東諸国を巡る監督は、殺戮と隣り合わせの生活を目の当たりにし、イスラム諸国が抱える問題の根深さに気づく。そして、アメリカと彼の地に横たわる問題も理解していく。
言論の自由などないに等しいサウジアラビアでの虚(むな)しくなるようなインタビュー、イスラエルで体験した憎悪とも言えるほどの拒絶、果てしなく続く戦争で荒廃しきったアフガニスタンの貧困……。
その旅路のなかでスパーロック監督は、ビン・ラディンだけが世界の安全を脅かしているわけではないことに気づく。紛争や貧困、弾圧、政治と宗教の一体化など様々な問題がはびこる社会がビン・ラディンを生み、例えビン・ラディンを殺しても、根本の問題が解決されない限り、新たなビン・ラディンが生まれてくるだけのことだと。そして、ビン・ラディンへの恐怖心は、アメリカ人が自ら作り上げた「内なる悪魔」なのだとも……。
平和を望み、ただ家族や友人たちの幸せを願う中東の市民たちの声を聞き、共感を深めていくスパーロック監督。間もなく父親になる監督が、まだ見ぬ子を思いたどり着いた答えに、きっと多くの人が賛同するはずだ。
そして気になるのが、スパーロック監督が我が子の誕生シーンに立ち会えるかどうか。そこは、ぜひ映画を見てチェックしてほしい。
『ビン・ラディンを探せ!〜スパーロックがテロ最前線に突撃!〜』は『松嶋×町山 未公開映画祭』(http://www.mikoukai.net/index.html)で配信中。
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