年末年始の生ぬるいテレビ番組に飽き飽きしている方もいると思うが、そんな方々にオススメしたいのが『レリジュラス〜世界宗教おちょくりツアー』だ。批判続出の超辛口コメディ『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』のラリー・チャールズが監督し、コメディアンのビル・マーがナビゲーターをつとめる宗教をテーマにしたドキュメンタリーで、日本未公開のアメリカ製ドキュメンタリーを集めた「松嶋×町山 未公開映画祭」でWeb公開中だ。
・[動画]『レリジュラス〜世界宗教おちょくりツアー〜』予告編
・『松嶋×町山 未公開映画祭』特集
八百万(やおよろず)の神をもつ超!多神教で、年末にはクリスマスを祝い、年明けには初詣に繰り出す多くの日本人にとってはピンと来ないだろうが、キリスト教やユダヤ教など一神教を信じる人々には、すべての生活が宗教を軸に回っているという人が少なくない。そんな宗教のバカバカしさに、ビルがズバズバと突っ込みを入れていく様子は、正直言って痛快だ。
ちなみに映画によると、アメリカでは進化論を信じていない人の割合が結構いて、32カ国中、トルコに次いで2番目の多さだという。進化論を信じないと言えばまっさきに思い浮かぶのがキリスト教原理主義者だが、ビルはそんなキリスト教の聖書の矛盾点を鋭く突いていく。
処女懐胎をはじめ、水の上を歩いたり蛇がしゃべったりと、現実ではありえない事柄が数多く記されている聖書。その内容を真実だと主張する人々は実は決して少なくないようなのだが、ビルはそんな人々に議論を挑む。なかには怒って帰ってしまう人もいるが、彼の思いはただひとつ──「極めて理論的な人も宗教のこととなると別で、非現実的な聖書を信じてしまう。その理由を突き止めたい」というものだ。
宗教は脳に障害を起こす病気とまで言い切るビル。死んだらもっといい場所、つまり神のそばへ行けると信じる人には「なら、自殺すれば」と言い放ち、信仰心厚い人々の盲信を笑い飛ばす。ビルにズバリと矛盾点を突かれた人々の一瞬の戸惑いや、すぐに厚い信仰心を立て直す様子は一見の価値あり。また、ビルの突っ込みに対する、メチャクチャながらも絶妙な回答には感心すると同時に笑ってしまう。
ブッシュ前大統領の十字軍気取りの発言はあちこちで物議をかもしたが、作品中では前大統領の大先輩方の宗教に関する発言も紹介される。ベンジャミン・フランクリンの「灯台は教会より有益」、ジョン・アダムズの「宗教がなければ世の中はよくなる」、トマス・ジェファーソンの「キリスト教はゆがんだ制度だ」。ブッシュ前大統領とは違い、建国の父たちは、宗教というものを冷静に理解していたのだろう。
ビルは言う。「多くの善人が宗教を良いものにしようと努力するが、いつの間にか腐敗し、子どもたちを性的虐待し、人殺しまでさせる」。「指導者は信者を支配下におくために思考力を奪う。ナンセンスな話で人々を支配し、宗教を盾に戦争を起こさせる」。
ブッシュ以前は気にもしなかったアメリカの宗教問題。だが、日本人とはかなり異なる思考回路をもつらしいこの国の一面を知ることができる、笑ってタメになる1本。同じく「松嶋×町山 未公開映画祭」で公開中の『ジーザス・キャンプ〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜』と併せて見ると、より一層、アメリカという国を知ることができるはずだ。
『レリジュラス〜世界宗教おちょくりツアー〜』は『松嶋×町山 未公開映画祭』(http://www.mikoukai.net/index.html)で配信中。
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