1969年の8月15日から3日間に渡って開催されたウッドストック・フェスティバル。ジャニス・ジョプリン、グレイトフル・デッド、ジミ・ヘンドリックスなど30組以上のビッグネームが顔をそろえた、この伝説的な野外コンサートの舞台裏を描いた映画『ウッドストックがやってくる!』が、1月15日より公開される。
我が町にコンサートを誘致しようとした負け犬青年の奮闘を描いた本作を監督したのは、『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞監督賞を受賞した名匠アン・リー。今もなお語り継がれるウッドストックを新たな視点で捉え、見事な青春映画に仕立て上げたリー監督に、ウッドストックや映画についての思いを語ってもらった。
・[動画]『ウッドストックがやってくる!』予告編
・『ウッドストックがやってくる!』 作品紹介
──ウッドストックのことは覚えていますか?
監督:ニュースで見たことは覚えているよ。髪をフワフワに膨らませた男がギターをかき鳴らして、その周囲は人の海。噛みつきそうな勢いで「ウッドストックがこの国で、ここニューヨークで始まりました」って伝えていた。覚えているのはこれくらい。でも、音楽は話題になっていたよ。ベビー・ブーマーたちは世界の歴史を書き換えようとしていた。だから1人の大人として、そこから逃れることはできなかったんだ。まだその雰囲気はあたりに漂っているし、年月を経てウッドストックは、自由、新しい世代、そしてそのほか多くのものを象徴する伝説的なシンボルとなったんだ。
──以前、70年代を舞台に家族の崩壊を描いた『アイス・ストーム』(97年)を監督していますが、関連性は?
監督:そうだね。ウッドストックという言葉を聞いたとき、ウッドストック後の話をやったことを思い出したんだ。ウッドストックは無邪気さの絶頂に起こったこと。あのときの情熱は、やがて衰退していく。そしていろんなものが衰えていって、いやな後味が残った。それが『アイス・ストーム』なんだ。
──ロック・フェスに行った経験は?
監督:ないんだよ。唯一、行ったことがあるといえば、セントラルパークで開催されたサイモン&ガーファンクルの再結成のときだけ。フェスティバルに行った経験もないからLSDもやったことがない(笑)。言うのも恥ずかしいんだけどね。
──本作でもゲイが登場しますが、『ブロークバック・マウンテン』を意識したのでしょうか?
監督:原作にあったんだよ。でも、原作のちょっと重いシーンは使わなかった。汚いものがたくさんあったからね。そして、ある種のゲイの部分は軽く描写するにとどめたんだ。主人公がゲイだというのは彼の人生のひとつの事実にすぎない。彼がゲイなのか服装倒錯者なのか、あるいはオカマなのかは分からない。カテゴライズはできないけど、彼はあらゆる点においてとても気楽だ。それが、僕が考えるウッドストックなんだ。
──ウッドストックの思い出は、オバマが大統領になった今のアメリカへの共鳴に通じていますか?
監督:そう願うよ。あまり説教臭くなりたくはないんだけど、ウッドストックに引かれ、その映画を作ってみんなと共有したいと思う理由は、そういう心理なんだと思う。
──この映画についてメッセージを!
監督:素晴らしいキャストとスタッフのおかげで、ウッドストックのエネルギーとスピリットを感じることができた。撮影は本当に楽しかったよ。なので、みんなにもきっと楽しんでもらえると思うんだ。
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