今や10億ドル(約830億円)となったアメリカの出産ビジネス市場。母子の都合は二の次で、ベッドの回転率を上げることを何よりも重要視し、帝王切開や陣痛促進剤での人工的な出産が当たり前のものとなり、自然分娩に立ち会ったことのある医師はほとんどいない状態! ドキュメンタリー映画『ビーイング・ボーン〜驚異のアメリカ出産ビジネス〜』は、そんな出産を巡る現状を追い、ゆがんだ医療の異常さを訴える。
この映画のトークイベントが1月10日に行われ、産婦人科医の堀口貞夫が日本の産科医療の現状について語った。
・『松嶋×町山 未公開映画祭』特集
・[動画]ビーイング・ボーン』予告編
人気マンガ家の桜沢エリカが自宅で出産するなど、近年、自宅出産が再脚光を浴びつつあるが、堀口は「日本では1960年を境に自宅出産と施設出産の割合が入れ替わり、今では自宅出産は0.1%にも満たない」と現状を報告。
本作は自然分娩を勧める作品だが、堀口をはじめとした自然分娩推進派の医師たちの悩みについても言及。「最近の悩みの種は、自然のお産をしたいと言いながら、普段の生活が“自然”になっていない人が多い。コンビニ弁当だけ食べているとか運動をしないとか。必ずしも自然ではない状態が目立つようになってきた」と、理想と現実の乖離(かいり)について語った。
映画では、アメリカの新生児の死亡率は先進国のなかで2番目に高いと報告されているが、日本の妊婦の出産時の死亡率について堀口は「(1930年代頃は)700人に1人が死亡していたが、今では17,000人に1人まで減少している。これは、生理が始まってから閉経するまでに(出産以外で)亡くなる人の10分の1の割合」と語り、日本の産科医療の進化を口にした。
また助産師の現状について、「本来、助産師がお産にずっと付き添っていてあげるべきなのに、助産師は看護師の仕事もできるため、看護師でもできる仕事をふられてしまうこともある」とコメント。病院の姿勢に疑問を投げかけた。
最後に堀口は、産院選びのポイントについてアドバイス。「産む本人がどう考えるかによる。様々なリスクを考え、安全性を重視するなら病院だし、15時間ほどかかる長いお産をずっと激励してもらい、付き添って欲しいのであれば助産院になるだろう」と語る一方、「リスクのあるお産ほど、後々の記憶として傷が残りやすいので、助産師さんの小まめなケアが必要」と注意点についても触れていた。
『ビーイング・ボーン〜驚異のアメリカ出産ビジネス〜』は、渋谷アップリンクほかで開催中の「リアル!未公開映画祭」で上映。今夏、ロードショー公開されることも決定した。また、日本未公開の海外ドキュメンタリー39本をWeb公開する「松嶋×町山 未公開映画祭」でも配信中だ。
詳しくは「リアル!未公開映画祭」公式サイト(http://www.webdice.jp/realmikoukai/)、または「松嶋×町山 未公開映画祭」公式サイト(http://www.mikoukai.net/index.html)をご覧ください。
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