9.11で忘れてならないのは、人々はまだ苦しんでいるということ
2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件の際、ニューヨークで救出活動を行なった俳優のスティーヴ・ブシェミが、当時の記憶や現場で救助にあたった消防士や警官など、ファーストレスポンダーが抱えるトラウマや健康被害についてのエッセイを発表した。
・アメリカ同時多発テロ事件で権力を掌握したチェイニー元副大統領を描いた問題作
ニューヨーク市の元消防士だったブシェミは20年前、要請を受けて世界貿易センタービルで救出活動を手伝った時のことを「TIME」誌上に綴った。
現在63歳のブシェミは、18歳の時に消防士になり、並行して演技レッスンも受けていたが、両立が難しくなり、4年後に俳優の道に進んだ。クエンティン・タランティーノ監督の『レザボワ・ドッグス』(92)や『ファーゴ』(96)などのコーエン兄弟監督作、ジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』(19)などに出演している。
事件発生の翌日から救出活動に参加しブシェミによると、高層タワー2棟が崩壊したグラウンド・ゼロの現場では、のちに問題となった有毒化学物質の存在を知らずに、大量の粉塵による息苦しさから防塵マスクを外す人も多かったようだ。
「粉々になったコンクリートや、何だかよくわからないものでマスクがすぐ詰まってしまい、マスクなしの方が仕事ははかどった」「誰かが『これのせいで、20年後には死ぬかもしれない』と言っていた」。
「実際は20年もかからなかった。瓦礫が撤去される前に、衰弱した慢性疾患が表面化した。現在、9.11の現場で有毒物質にさらされて死亡した人の数は、あの日に死亡した人の数よりも多いと考えられている」
粉塵には「もちろん発がん性物質が大量に含まれていた。だが、もし消防士たちに真実が伝えられていたとしても、彼らは仕事を続けてただろう」と綴ったブシェミは、自身の活動についてこう振り返る。
「現場にいたのは1週間たらずだったが、事件の大きさを実感したのは家に戻ってからだった。私はすでにセラピストに会っていた。それでも、起こったことの甚大さを噛み砕くことはほぼ不可能だったが、すべての感情に寄り添ってくれる人がいるだけで慰めになった。ファーストレスポンダーには通常そういうことがない。弱さを表明するのは誰にとっても難しい。特に、守る者というアイデンティティを持つ人にとっては」
「絶対に忘れるな、と誰もが言った。そうするしかない人もいる。驚くべきなのは、誰のことを思い出さなければならないかだ」と語るブシェミは、テロ発生直後に設立された犠牲者補償基金の資金が底をつき始めたとき、被害を受けた人々が自らロビー活動を行うはめになったこと、2019年にようやく実現したことにも触れ、合わせて行われた動画インタビュー(https://bit.ly/2X3MVwQ)で「絶対に忘れてはならないのは、人々はまだ苦しんでいるということです。人々はまだ死んでいくのです」と語った。
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