『キャビン』
男女5人の大学生が、人里離れた森の奥にある古ぼけた山小屋へとバカンスに出かける。大学生のなかには金髪女子、カップル、葉っぱでラリッてるおバカの姿も……。はい、ひとつを除き、すべて条件は整いました! 映画好きな方なら、否、映画をそれほど見ない人でも、この後の展開は想像がつくはず。
足りないひとつというのは、いわゆる殺人鬼。5人はひとり、またひとりと殺人鬼の餌食になっていくという。スラッシャームービーの典型を思わせて幕を開ける『キャビン』。
でも『キャビン』は単なるスラッシャームービーではない。ジャンル不能のとんでもぶっ飛びムービーなのだ! 確かに殺人鬼は登場します。それも期待通りの殺人鬼が。ただ、本作で違うのは、舞台が山小屋だけではないこと。別の場所で、ある物語が同時進行していくのである。しかも地球存亡を担う(!?)壮大なプロジェクトが!!
メガホンを執ったのは大ヒットドラマ「LOST」シリーズの脚本を手掛けたドリュー・ゴダード。脚本は、彼と、『アベンジャーズ』の脚本家ジョス・ウェドンが共同で手掛けている。本作のテイストを感じ取るのに、監督&脚本がドリュー・ゴダードだというのはいいヒントになるだろう。つまりは、常識や定番は通用しない。どこから玉が飛んでくるのか、まったく予想ができないのだ。
かといって、まるで辻褄の合わない、ただのハチャメチャ映画ならばここで取り上げたりはしない。『キャビン』は、ホラー映画ファンはもちろん、コメディファンやSFファンにもウケる要素を持った、ある種の傑作といっていい映画なのである。
実は山小屋を監視している別パート(なぜそんなことをしているかは、ナイショ)には『扉をたたく人』のアカデミー賞ノミニー俳優リチャード・ジェンキンスが登場。さらにはブラッドリー・ウィットフォードといったベテランも顔を見せ、絶妙なユーモアを提供すると共に、ありえない展開に奇妙な説得力を持たせる。そしてSFといったらこの人!といった超大物まで出演!!
山小屋パートも途中からは大変な展開に陥っていき、殺人鬼もひとつのパターンではない状態に。そして最終的にはふたつのパートがひとつに結合。もう、ほんっと、てんこ盛りすぎて、途中からは楽しくて笑うしかないっす。
アイデア勝ちといえば、それまでだが、そのアイデアがとにかく秀逸で、ゴダード監督の頭のなかを、ホラーだけに、かち割って見たくなる1本。ゴダード的カオスを体験あれ。(文:望月ふみ/ライター)
『キャビン』は3月9日よりシネマサンシャイン池袋ほかにて全国公開される。
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