『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉弟監督と『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督が仲良く脚本・監督・製作を手掛けた『クラウド アトラス』。19世紀から24世紀にかけて6回ほど転生した魂たちの物語で、それぞれが、ある人生では男で、別の人生では女で、あるときは善人で、あるときはうだつが上がらない人物で……とさまざまな人生を体験しながら成長しようと試みている物語だ。
魂たちは、ある人生では恋人で、別の人生ではいがみ合う仲で、と関わり合いながら、その“生”を学んでいく。いわゆるニューエイジやスピリチュアル本で説かれている輪廻転生や魂の成長、ソウルメイトといった話を、世界的なヒット作を生み出した監督たちがスリリングでスタイリッシュなシーン満載でエンターテイメント性高い作品にまとめたところが面白い。生まれ変わりが早すぎやしないか?と思う魂もあったが、早死にして10年以内に生まれ変わった計算にすればなんとか辻褄は合う。
さて、この物語にはトム・ハンクス演じる善悪を揺れ動く魂を中心に、正義感の強いハル・ベリー演じる魂、ヒュー・グラント演じる金銭欲にまみれた魂などが登場するが、それぞれの魂の基本的性質はほとんど変わらない。三つ子の魂百まで、である。成長するって難しい、とも思ってしまうのだが、それはさておき、そんな実力派スターたちのなかで、誠実でヒーロー的な魂という最もかっこいい役どころを与えられていたのが、ジム・スタージェスだ。
ジムが演じる魂が主に活躍するのは、1849年の若き弁護士アダムと、2144年ネオ・ソウルでの革命家ヘジュである。アダムは理想に燃えるバカ正直すぎるようなハンサム弁護士で、邪心に満ちた医師に騙されながらも黒人奴隷と友情を結ぶ。革命家ヘジュは、メイクにより別人のような顔になっているが、やはり理想に燃える実直な男で、ペ・ドゥナ演じるクローンのウェイトレスを守ろうとする。ペ・ドゥナとは実生活でも恋人ではないかと噂になっているが(否定しているけれども)、スクリーン上の相性はよく、悲観的な将来を予期しながらも互いに思いやる感じが切なくてよい。
ちなみに、弁護士アダムの妻も、ペ・ドゥナが演じている。この2つは同じような人生で、「誠実でハンサム」な雰囲気のジムによく似合っている。ジムといえば、『ラスベガスをぶっつぶせ』(08年)で主役を演じた際に“次世代のトム・クルーズ”と謳われていたが、イギリス人俳優の持つちょっと地味な感じが、トム街道まっしぐらではなく、主役から脇役までOKな多彩な俳優への道へと進ませているようだ。
『クライドアトラス』では、酔っ払いのサッカーファンも演じているが、金髪にしていたせいか、あるいは弁護士と革命家がはまりすぎていたせいかもしれないが、ちょっと板についていないような気がした。すでに主役級の人ではあるが、まだまだ向上の余地があるのも魅力的だ。しかし、『アクロス・ザ・ユニバース』((07年)の頃は愛らしかったふっくらした頬(関根勤さんに似てると思った)が、最近ではちょっと精悍になり、さらにかっこよくなった。今年はキルスティン・ダンストと共演した『アップサイドダウン 重力の恋人』も公開予定で、イケメンぶりを堪能できるラブストーリーはもちろん嬉しく楽しみではあるが、毒気の強い役もいずれ板につくのではないかと期待もしている。(文:秋山恵子/ライター)
『クラウド アトラス』は3月15日より全国公開される。
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