戦時下に自らの命を顧みず“本”を守った人たちの姿を描いたドキュメンタリー『疎開した40万冊の図書』。この映画のトークイベントが68回目の終戦記念日となった8月15日に日比谷図書文化館で行われ、ナレーションをつとめた俳優の長塚京三と作家の早乙女勝元、金高謙二監督らが登壇した。
同作は、第2次大戦中に日本の文化を守るため、当時日比谷図書館長だった中田邦造氏と古書鑑定家の反町茂雄氏を中心に、都立一中(現日比谷高校)の生徒らが日比谷図書館から蔵書を郊外に疎開させていたという知られざる真実を描いたドキュメンタリー。
本の疎開に参加した都立一中の生徒たちや図書館員、元国会図書館職員の作家・阿刀田高や蔵書をかくまった土蔵の持ち主らの証言で、当時の過酷な状況が語られていく。
イベントで長塚は“疎開”について聞かれ「僕が生まれる前に父が浜松で持っていた工場が艦砲射撃の被害に遭い、母の郷里に疎開したので、実は僕は疎開先で生まれました。劇中で都立一中生が図書疎開の時に命がけの作業だったにも関わらず楽しそうに話しているのが印象深い。好奇心が本を守ったんだな、と感動を覚えました」とコメント。
作家の早乙女は「最初この映画を見た時に直感ですごくいい話だなと思いました。私も12歳の時に鉄工所に駆り出されましたので、戦争責任がゼロとは言えない。その中で本を運んだ当時の都立一中生たちは幸運だと思います」と自身の戦争体験を交えて映画を評価した。
また、金高監督は「文化を守る、本を守るということは素晴らしいこと。僕も学校を停学になった時に厳格な兄に家に閉じ込められて色んな本を渡された。その時に読んだ森鴎外の小説が僕のその後の人生を考えさせてくれました」と本への熱い思いを口にしていた。
『疎開した40万冊の図書』は9月17日、10月15日に日比谷図書文化館、11月2日より都立写真美術館にて公開となる。
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