【あの人は今】『ベスト・キッド』のラルフ・マッチオ、イクメン時代を経て再び活躍!
ラルフ・マッチオ
7月に『Girl Most Likely(原題)』という映画がアメリカで公開された。『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のクリステン・ウィグやアネット・ベニング、マット・ディロンが出演する同作のニューヨーク・プレミアに、出演する若手女優が父親にエスコートされてやって来た。その父親とは、ラルフ・マッチオ。内気な少年が日系の老人から空手を学ぶ『ベスト・キッド』シリーズで主演をつとめた、あの童顔の俳優だ。
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現在51歳の彼には、26年前に結婚した妻との間に『Girl Most Likely』でスクリーン・デビューを果たした21歳の娘・ジュリアと、『ベスト・キッド』で演じた少年と同じ名前をつけた17歳の息子・ダニエルがいる。
プレミア会場で娘と一緒に写真撮影に応じるラルフは体型もあまり変わらず、遠目にはまだ30代で通じるが、近くで見れば、目尻にシワもある。だが、目の輝きや、ちょっとはにかんだような表情は、人気絶頂だった80年代半ばと少しも変わらない。
『ベスト・キッド』(84年)の撮影はちょうど30年前だ。ラルフは7月に雑誌「Sports Illustrated」に寄稿し、「僕は結婚して、子どもが2人いる。2人とも、1984年に登場したダニエル・ラルッソ(『ベスト・キッド』の主人公)より年上になった」と綴った。ちなみに51歳というのは、パット・モリタがダニエルの師匠、ミヤギを演じたときの年齢と同じというのに、ちょっとした衝撃を感じずにいられない。手ぬぐいのはちまきをしめたダニエル、たどたどしい英語(演じるモリタはアメリカ生まれでネイティブ・スピーカー)で飄々と、深遠なる哲学を語るミヤギ。愛すべきキャラクターを演じた2人の俳優に、その後もついて回る決定的なイメージを与えた。モリタは2005年に亡くなったが、葬儀でラルフは、劇中と同じ呼称で「先生は永遠です(Forever, My Sensei)」と弔辞を締めくくったという。
ラルフが注目を浴びたのはフランシス・F・コッポラが当時、新進の若手たちを集めて撮った青春映画『アウトサイダー』(83年)。ブレイク前のトム・クルーズも出演している同作で、ラルフは不良グループにいながら心優しく、悲劇的な最期を迎えるジョニーを演じた。15〜16歳にしか見えないが、この時もう20歳。だが、『ベスト・キッド』はもちろん、天才ギタリストを演じた『クロスロード』(86年)でも少年役。後者は本物のスーパー・ギタリスト、スティーヴ・ヴァイとの演奏対決シーンが有名だが、大人と子どもの対決にしか見えない2人の年齢差が実はたった1歳(ヴァイは1960年、ラルフは1961年生まれ)なのだ。
この若々しさは当座は武器となったが、30代、40代を迎えると、むしろ枷(かせ)になった。若くもない。かといって年相応にも見えない。本人は相当に苦しんだはずだ。だからだろうか。子どもの誕生を機に、ラルフは家族と過ごす時間を優先する方向でキャリアを築いていった。子どもの学校の送迎や、ギターやテニスを楽しむ時間をキープできる範囲での仕事量では、現役のスターはつとまらないが、「僕の最大の目標は家庭を築くことだ」と本人は09年に「People」誌上で語った。
子どもたちの成長に伴って活躍の場もまた増え始めている。最近ではテレビシリーズ『アグリー・ベティ シーズン3』(08〜09年)やアンソニー・ホプキンス主演の『ヒッチコック』(12年)、リアリティ番組『アメリカン・ダンシングスター』にも出演している。
本人のTwitter公式アカウントを見ると、娘とのプレミア上映会出席や、息子の学校訪問の様子などをツイートしている。ラルフ・マッチオとはどんな人か? トップに添えられた自己紹介に勝る説明はないだろう。「俳優、クリエイター、夫、父親、順不同……これが僕、ラルフだ」(文:冨永由紀/映画ライター)
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