満席続出のオスカー映画。D・ボイル監督が語るヒットの理由とは?
舞台はインド、ハリウッド・スターの出演もない低予算映画ながら、本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞など最多8部門受賞に輝いた『スラムドッグ$ミリオネア』。4月18日に日本公開されるや満席が続出! 決して多いとはいえない119館という公開規模ながらも興行ランキングで初登場第5位を記録するなど、GW映画の目玉として注目を浴びている。そんな話題作について、ダニー・ボイル監督に話を聞いた。
アカデミー賞授章式では、いつにない興奮ぶりを見せた監督。その喜びはどれほど大きかったのだろうか。「受賞した瞬間を今でも思い起こします。たった1400万ドルの予算で作り、大スターも出ていないこの作品が、こんな成功を収められたんですから、改めて感激してしまいます。全世界の映画祭で多くの賞を獲得し興行的にも成功したのは、この映画のストーリーにこそ理由があるんです。主人公が1人の小さな少年で、彼が自分の夢のために絶え間なく努力をして、クイズでの大金獲得に挑戦する。でもお金よりもっと大切なのは、彼が、彼の想う人を勝ち取ろうとすること。これは我々が住むこの世界のどこかで起こっている話だし、国や宗教にかかわらずみんなが共感する話だと思うんです」
この映画のヒットには、最近の世界情勢も関係していると監督は語る。「世界不況で厳しい局面の中、人々はその長い旅の後に希望を求めています。そして、オバマ氏が大統領になったことに見られるように、人々が変化を望み、よりオープンになっているという傾向も影響していると思います。それから、この映画のタイトルにもなっていますが、“スラムドッグ”、つまり勝てそうもない弱者が、夢と強い決意をもってすべてを乗り越えていき、逆境から学んだことが答えに結びついていくというストーリーも、人々を惹きつけているんだと思います」。
脚本を手がけたのは、『フル・モンティ』(97)のサイモン・ビューフォイ。当初は「クイズ番組の映画なんか作りたくないと思った」という監督だが、脚本がビューフォイだと聞き台本に目を通したところ、「10ページほど読んだ頃には、もうこれをやろうと決めていた」というほどに惹きつけられたという。「彼との仕事は最高です。とても素晴らしい脚本で、小説の脚色ではなく、大部分が彼自身の作品になっていました。方向性がなくフワフワしているような、調子ばかりいい脚本は好きじゃない。方向性が見える脚本が好きなんです」。製作が決まってからは、ビューフォイとは何度も一緒にインドを訪れ、脚本を磨き上げると同時に、作品への理解を深めていった末に完成したのが、この『スラムドッグ$ミリオネア』なのだ。
最後に監督に、映画の見どころを語ってもらった。
「この映画の舞台はインドのムンバイです。この町にあるインド最大のスラム街出身の少年が、世界最大のクイズショー『クイズ$ミリオネア』に勝ち進んでいくお話です。どうやって彼は答えを知りえたのか? それはこの映画の中核になる部分なんですが、彼の人生の沢山の経験が、クイズショーで出される質問の答えに繋がっているんです。そして、“なぜ”彼は答えを見つけ出したのか? それから、“なぜ”彼がこのクイズ番組に参加したのか──ぜひ皆さんの目で確認してください!」
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