ジェシー・アイゼンバーグ
映画館の席に座り幕が開くがいなや、ジェットコースターに乗った気分で時間を忘れ、ラストまで一気に連れていってくれるエンターテインメント大作『グランド・イリュージョン』。ラスベガスのショー会場から観客のひとりをパリの銀行に瞬間移動させての銀行強盗に始まり、ニューオリンズでの悪徳事業家からの資産強奪、そしてニューヨークで驚がくのクライマックスが待ち受ける!
・『グランド・イリュージョン』ジェシー・アイゼンバーグ インタビュー
4人のマジシャンたちが華麗に行う強盗イリュージョンとFBIとの攻防を描く本作で、チーム「フォー・ホースメン」のリーダー、アトラスに扮したジェシー・アイゼンバーグがカッコいい。ジェシーといえばパッと思い浮かぶのが、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグを演じアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた『ソーシャル・ネットワーク』(10年)。あの時の超絶すぎる早口演技を本作でも披露しているが、天才だからこそといおうか、コミュニケーション能力を欠いていたザッカーバーグに対して、人の心をつかんでナンボのマジシャン、アトラスを演じる今回は、同じ早口でも受ける印象が全く違う。
ジェシーのことなら前からチェックしてたよ!という人もいるだろう。本作にも出演のウディ・ハレルソンと共演している『ゾンビランド』(09年)、否、『イカとクジラ』(05年)から注目していたという映画ファンもいるのは予想できる。一貫して言えるのは、『ソーシャル・ネットワーク』以降に出演した『ピザボーイ 史上最凶のご注文』(11年)、『ローマでアモーレ』(12年)なども含め、ジェシーのイメージはどこか頼りない“オタク系男子”だったこと。
現在30歳のジェシーだが、まだまだ学生役でも通用する外見。でも、だが、しかし! 本作でのジェシーは違うのだ。ここにいるのは“男子”から完全に脱皮した、大人の男・ジェシー。自信に満ち溢れ、堂々と振る舞う姿に、これまでのファンも、本作で彼を知る人もシビれるに違いない。何しろ、これまでの彼からは想像できないプレイボーイな一面まで見せてくれるのだから。
さて、道化師の母と大学教授の父を持つジェシーは、ニューヨーク大学に合格していた秀才だが、演技の道を選び入学しなかった。とはいえ、大学に進学しようがしまいが彼の聡明さは同じなワケで、舞台脚本の執筆で高く評価されている。今年は大女優ヴァネッサ・レッドグレーヴと共演した舞台「The Revisionist」の脚本を執筆。さらにThe New York Times紙などにエッセイを掲載していたこともあり、現在でもThe New Yorkerなどに寄稿している。将来的には映画脚本を手掛けることもあるかもしれない。
オールスターキャストの本作。キャスティング時には真っ先にジェシーが決まり、そこからこのエンターテインメント大作は現実のものとして動き始めた。そして全米公開でスマッシュヒットを記録。すでに続編の企画も挙がっている。天然パーマが愛らしいジェシーには、これまで培ってきた“オタク系男子”のイメージも大切にしつつ、時に本作のような意外な役(ちなみに本作の彼は天然パーマじゃない!)で、イケメンぶりもちょい出ししながら、観客を魅了していってほしい。(文:望月ふみ/ライター)
『グランド・イリュージョン』は10月25日より新宿ピカデリーほかにて全国公開中。
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