ジョシュ・デュアメル
背が高くてハンサムで、何より思いやりがあって……。非の打ちどころのない理想の男性像が嫌みなくはまるのが、26日より公開の『セイフ ヘイヴン』のジョシュ・デュアメルだ。
・【この俳優に注目】オタク系男子が想像を超えた大変身、プレイボーイな一面にシビれる!
アメリカ南部の港町を舞台に、雑貨店を営むシングルファザーと、訳あって町に流れて来た女性が友情から愛を育んでいく過程を描くラブ・ストーリーで、原作はあの『きみに読む物語』のニコラス・スパークス。ヒロインが抱える秘密にミステリーの香りを持たせつつも、心に深い傷や悲しみを持つ男女の直球の恋愛映画だ。ジョシュが演じるアレックスは妻をガンで亡くし、まだ幼い息子と娘を男手1つで育てている。勤勉で誠実で、警官の友人からの信頼も厚い。そんな彼が、こじんまりとして住民同士の結びつきも深い町にいきなり現れた新参者とくっついたら、以前から密かに想いを寄せていた別の女性が嫉妬にかられるのが常套だが、そういう展開にはならない。ジョシュの持つ独特の清潔感のなせる技というか、大人の男ならあって当然な、どろっとしたものが彼には一切ないのだ。自分のかっこよさに本気で気づいていない感も、自然に体現している。
『トランスフォーマー』シリーズのレノックス少佐役として、あるいは「ブラック・アイド・ピーズ」のファーギーの夫としても知られるジョシュは今年41歳。大学時代はアメフトのクォーターバックとして活躍したというから、かなりの人気者だったはず。かっこよくて優しくて、という正統派の役割を無理なくキメられる術は学生時代に培ったのかも。
俳優を目指したのは大学卒業後、26歳でスカウトされてモデルを始めてから。スタートは遅めだが、そこからの展開は速かった。GAPのCMやクリスティーナ・アギレラなどのPVに出演し、1999年からは昼メロの人気シリーズ「All My Children(原題)」にレギュラー出演、2003年からはテレビシリーズ「ラスベガス」に出演(同番組にファーギーがゲスト出演して交際が始まった)、04年『アイドルとデートする方法』で映画デビューし、『トランスフォーマー』シリーズへの出演を機に仕事の主軸を映画界へとシフトしていった。
もともと俳優志望というわけではなかったが、まずは恵まれた容姿と演技力で次々とチャンスをものにしてきたジョシュ。それゆえなのか、何が何でも、と前へ出て行く押しの強さはあまり感じない。ガツガツしたところを見せない余裕も彼の持ち味だ。演技に取り組む真摯な姿勢は、『セイフ・ヘイヴン』で役作りのために劇中一度も共演シーンはないアレックスと亡妻の歴史を自ら考え、出会いの瞬間からノートに書き綴っていたというエピソードからもうかがえる。
ジョシュのもう1つの魅力は義理堅さと優しさだろう。放送41年間という長寿番組にして出世作「All My Children」が2011年、ついに最終シーズンを迎えた際は同番組にカメオ出演した。そして同年3月11日に東日本大震災が発生したときは同月27日(現地時間)にロサンゼルスで復興支援のチャリティ・マラソンのイベントを妻のファーギーと共に開催、赤十字を通じて14万ドルもの義援金を寄付した。彼は前年のハイチ大地震の被災者支援活動にも携わっている。
映画で演じる役に限らず、本当に親切で、しかもイケメン。インタビューではジョークを連発して場を和ませる楽しい人でもある。素顔の人間性がそのままスクリーンに出ている。眩しいほど強烈なオーラではなく、緊張をほぐして安心させてくれる存在感は、実は女性にとって何にも代え難い魅力ではないだろうか。(文:冨永由紀/映画ライター)
『セイフ ヘイヴン』は10月26日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開中。
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