2014年、前半は2月に発表されるアカデミー賞の有力候補作など、見応えある作品が目白押し。その中から選りすぐった10本を前後編に分けてご紹介しよう。
・【2013年の珍作品】ハリウッド大作に描かれた不思議の国ニッポン
まずは『ビフォア・ミッドナイト』(1月18日公開)。18年前、列車のなかで出会ったアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌの物語だ。ウィーンの街を夜通し歩き、再会を約束して別れた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』(95年)、9年後にパリで再会し、夕暮れまでの数時間を過ごした『ビフォア・サンセット』(04年)に続くシリーズ第3作。前作から9年経ち、今度はギリシャに舞台を移して2人は真夜中まで語り合う。設定をはいつもロマンティックだが、2人の交わす会話からリアルな男女の心の機微を引き出すリチャード・リンクレーター監督の手腕は健在。ピチピチだった20代から少しくたびれた中年になったイーサン・ホーク、ジュリー・デルピーの佇まいが妙に愛おしい。
2013年は『マジック・マイク』や『ペーパーボーイ 真夏の引力』で怪演を披露したマシュー・マコノヒー。その主演作『MUD マッド』(1月18日公開)は、アメリカ南部を舞台に、14歳の少年2人と川の中州で人目を忍んで暮らす男・マッドの交流を描く。お尋ね者の男に憧れとシンパシーを寄せる少年が、大人の世界が抱える矛盾に直面していく物語は、現代版『スタンド・バイ・ミー』の呼び声も高い。マコノヒーは『ダラス・バイヤーズクラブ』も2月22日に公開されるが、こちらもオスカー受賞を有力視される1本だ。
『アメリカン・ハッスル』(1月31日公開)は、昨年オスカー8部門で候補となり、ジェニファー・ローレンスが主演女優賞を受賞した『世界にひとつのプレイブック』のデイヴィッド・O・ラッセル監督が70年代のアメリカで実際に起きた収賄事件「アブスキャム事件」をもとに、天才詐欺師とFBI捜査官が手を組んだおとり捜査のてん末を描く。ラッセル監督作『ザ・ファイター』に出演したクリスチャン・ベールとエイミー・アダムス、『世界に〜』のブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、そしてジェレミー・レナーという最強布陣の共演は見応え満点。昨年に続き、本作もオスカーで多部門ノミネートが期待される。
もう1本、オスカー有力候補作は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(1月31日公開)。マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオによるコンビ5作目は、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォードの狂乱の日々を描く。学歴もコネもない若者が野心だけを武器に頂点に登りつめ、たった10年の間に成功から破滅のフルコースを経験する物語で、主人公をディカプリオが大熱演。人を見下し、良心の欠片もない下衆(げす)を凄まじい迫力で演じ切る。マシュー・マコノヒーはこちらにも助演で登場。
アカデミー賞常連のロン・ハワード監督は、『ラッシュ/プライドと友情』(2月7日公開)で1976年F1グランプリでの実話を映画化。ドライビングテクも私生活も派手なカリスマ・レーサーのジェームズ・ハントと緻密な頭脳派レーサー、ニキ・ラウダ。ライバルとして切磋琢磨する2人が熾烈な戦いを繰り広げるレース中に壮絶なクラッシュが起きる。ラウダは瀕死の重傷を負い、ハントは事故発生について自責の念に苦しみながらも残りのシーズンを戦い続ける。そして事故からわずか42日後、最終決戦の場にラウダは戻って来た。天才2人の友情に裏打ちされた誇りをかけた対決が、壮大なスケールで描かれる。(文:冨永由紀/映画ライター)
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