75歳以上に“死の選択肢” 衝撃テーマの日本映画『PLAN 75』がカンヌ映画祭を揺さぶる
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“隠れた名品”早川千絵監督の才能を高く評価
南フランスで開催中の第75回カンヌ国際映画祭。昨年のような厳重なコロナウイルス感染防止対策もなく、かつての賑わいも戻っているが、不穏な世界情勢の影響を強く感じさせる出来事が続いている。
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17日(現地時間)のオープニング・セレモニーにウクライナのゼレンスキー大統領がキーウから中継で演説した翌日、コンペティション部門でロシア人のキリル・セレブレニコフ監督の『Tchaikovsky’s Wife(英題)』がプレミア上映され、上映後に監督は「戦争にノーを! 文化がこの戦争を終わらせる可能性を秘めています」とコメントし、会場内に拍手が起きた。
セレブレニコフ監督は同作の記者会見の席で、「文化は空気であり、水や雲であり、つまり国籍とは全く関係ない」と語り、文化を包括的に禁止することは解決策とは思えないと語り、さらに今回の作品の出資者の1人でロシアのオリガルヒのローマン・アブラモビッチ氏について「ロシアでは芸術の真のパトロンである」として、氏に対する制裁解除を求めた。
これに猛反発したのが、ルイユ・ドール(ドキュメンタリー)賞の審査員長でヨーロッパ映画アカデミーのアニェスカ・ホランド監督だ。ホランドは21日(現地時間)、戦時下のウクライナ映画産業支援に関するラウンドテーブルの席で、カンヌ国際映画祭がロシア映画をコンペティション部門に受け入れ上映したことを批判した。
ホランドは1981年にポーランドに戒厳令が発動された際にフランスに亡命し、アカデミー賞脚色賞候補となった『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』(91)などを監督、2019年に『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を発表している。ヨーロッパにおけるロシアの文化作品を全面的に禁止するべきだと主張するホランドは「もし私に決定権があったなら、映画祭の公式プログラムにロシア映画は含めませんでした。たとえキリル・セレブレニコフがどれだけ才能ある芸術家であっても、です」と語った。
20日(現地時間)、ジョージ・ミラー監督の『Three Thousands Years of Longing(原題)』の上映前にはレッドカーペットに女性1人が乱入、着衣を脱ぎ捨ててウクライナの国旗の色をペイントした裸体で、ウクライナで起きている性暴行への抗議を表明する一幕もあった。女性はフェミニズム・グループの活動家で、ウクライナ国境の色の裸の胸に「私たちをレイプするのをやめろ(STOP RAPING US)」と黒字で書き、下半身は血のりをつけていた。すぐに警備員によって外に連れ出され、ミラー監督や主演のイドリス・エルバ、ティルダ・スウィントンらはそのままレッドカーペットを歩いたが、集まったカメラマンたちの写真によって、彼女のメッセージが広く世界に伝わったことは間違い無いだろう。
同じく20日には、「ある視点」部門で日本の早川千絵監督の『PLAN 75』が上映された。75歳以上に生死の選択肢を与えるという衝撃的なモチーフのインパクトは、それこそ国籍などに関係なく観客の胸に刺さったようで、「The Hollywood Reporter」誌は「カンヌの隠れた名品(Cannes Hidden Gem」、「New York Magazine」電子版でポップカルチャーを扱う「Vulture」は「早川千絵の心揺さぶるディストピア物語『PLAN 75』は新進気鋭の脚本家/監督の登場を告げるものだ」と高い評価を得ている。
Chie Hayakawa’s heart-wrenching dystopian Plan 75 marks the arrival of an exciting new writer-director. @rachel_handler writes #Cannes2022 https://t.co/SGysCS5hWI
— Vulture (@vulture) May 20, 2022
映画祭後半には、是枝裕和監督が韓国で撮った『ベイビー・ブローカー』をはじめ、コンペティション部門の受賞有力候補作が続々登場する。晴れの場に集まるスターたちの表情を見るのも楽しみだ。
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