香港での「雨傘運動」の絶望から生まれた作品…民主主義や自由はどこへ
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7・16公開『Blue Island 憂鬱之島』予告映像公開
香港・日本合作で製作されたドキュメンタリー映画『Blue Island 憂鬱之島』の予告映像が完成した。
2014年、香港の若者たちが未来のために立ち上がった“雨傘運動”の79日間を描いた『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(16年)のチャン・ジーウン監督による長編第2作目で、北米最大のドキュメンタリー映画祭「Hot Docs 2022」での最優秀国際ドキュメンタリー賞受賞に続いて、第13回台湾国際ドキュメンタリー映画祭(TIDF)で3冠を獲得した。
香港に生きる者が抱えるそれぞれの世代の葛藤
すべては、彼らが世界と向き合おうとした時期に起きた出来事だった。ある者は文化大革命が起こるくらいならと、香港に向かって横たわる海峡を泳ぎ渡ることを選んだ。また、ある者は学生の自由の要求を支持し天安門広場へと向かったが、戦車と銃弾によって夢と肉体が削ぎ落とされる光景を目撃することになった。そして、あるものは理想の香港を作るため暴動の渦中に向かっていった……。
この若き日の熱狂は、時代の移り変わりとともに深い闇の中に埋もれてしまった。しかし、彼らがいかに抵抗したかという記憶は、香港の歴史に残るかけがえのない瞬間の記録と証言であり、市民運動に参加する若者たちへ今でも多くの示唆を与えている。
それぞれの世代の葛藤から、未曽有の危機に直面している香港の人々は、何を受け止め、どのような答えを導き出すのか。そして、私たち自身は……。
『乱世備忘 僕らの雨傘運動』でチャン監督は、「20年後に信念を失っているのが怖いか? 」と出演者に問いかけた。
その言葉は監督自身への問いかけでもあったが、運動直後のやる瀬ない思いが憂鬱さとなり島を覆い、想像を超える急激な変化の中で、20年を待つまでもなくチャン監督は自らその問いに答える必要に迫られることとなった。
チャン監督「これは香港や香港人のアイデンティティの物語です」
雨傘運動を先導していた者たちが逮捕され、市民が沈黙したことで、この島の民主主義や自由への道のりを、より深く再考しなければと同作の製作を思い立つ。
一国二制度が踏みにじられた香港社会は混乱を極め、コロナ禍の影響もあり窮地に陥りながらも、香港が内包する不安と希望を描いた衝撃作『十年』(15年)のプロデューサーであるアンドリュー・チョイ、若き政治家の葛藤を描いた『地厚天高』(17年)を制作したピーター・ヤムと共に、クラウドファンディングによるたくさんの方の応援もあり、22年、ようやく完成を迎えた。
20世紀後半、文化大革命(66~76年)、六七暴動(67年)、天安門事件(89年)と世界を震撼させた事件に遭遇し、激動の歴史を乗り越えてきた記憶。そして現代、香港市民の自由が急速に縮小してゆくなかで、時代を超えて自由を守るために闘う姿をドキュメンタリーとフィクションを駆使してより鮮明に描き出す。この映画は、自由を求めるすべての人々とあなた自身の物語でもある。
同作の構想は14年の「雨傘運動」直後のどん底の中で浮かんだという。
「集団的な失意と絶望感に覆われながら、香港の別の大きな歴史的な出来事を経験した人々を探し出し、彼らの経験を回想することで、市民活動における苦境の普遍性について思い巡らせました。同作は、香港や香港人のアイデンティティについて熟考しながらも、この街の行く末を形作ることができない現状に落胆してきた世代についての物語です。この幻滅は、私たち全員をつなぎとめる普遍的な鎖なのだと思います」とチャン監督はコメントしている。
『Blue Island 憂鬱之島』の劇場公開は日本が世界初となり、7月16日から、東京・渋谷のユーロスペースなど、全国で順次公開される。
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