『オール・ユー・ニード・イズ・キル』製作者が語る
日本発コンテンツの潜在能力
日本人小説家・桜坂洋による原作「All You Need Is Kill」を実写映画化した『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。原作は「集英社スーパーダッシュ文庫」から刊行されている若者向けのライトノベルなわけだが、製作者のアーウィン・ストフ氏は日本のライトノベルというジャンルをまったく知らなかったという。2014年3月に本作のキャンペーンで来日した際に聞いて驚いたそうだが、「いいストーリーはいいストーリーだと思うだけで、ライトノベルだからどうだとか思わなかった」とストフ氏は付け加えた。
・前編/日本のライトノベルをハリウッド超大作に映画化した真相に迫る!/『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
日本でも誰もが知る有名な原作というわけではなく、巷間言われている「ハリウッドはアイデアが枯渇してるのではないか?」との声も高くなりそうだが、それについてストフ氏はもちろん否定する。
「映画の歴史を紐解くと、『フランケンシュタイン』はイギリスの古い小説を元にしてるなど、世界中の物語をベースに作られてきた。黒澤明監督もいい例で、シェイクスピアの『マクベス』をもとに『蜘蛛巣城』を作り上げたが、それは黒澤明のアイデアが枯渇したわけではなく、『マクベス』に何らかの可能性を感じたからだ。作り手は様々なものからインスピレーションを感じるものだよ」
国際的に通じる普遍性があるということも映画の元ネタとして重要だと話すストフ氏は、日本のアニメや漫画、ライトノベルはレベルが高く、映画の素材としてまだまだ可能性があると見ている。それら日本のコンテンツの印象を聞くと、ストフ氏は言葉にするのはとても難しいと少し考えてから、「強いて言うなら、日本人は高い美的センスを持っている。西洋のものをただ真似るのではなく、日本的に消化吸収してさらに良いものを作る力を持っている」と説明した。
ピアノやギターは日本のヤマハのものが世界的に認められている事実があるし、ストフ氏が一番好きだというイタリアンレストラン「リストランテ・マッサ」も、日本人シェフ・神戸勝彦が腕を振るう東京のレストランだ。ストーリーテリングにおいても日本人は、西洋的なテーマを日本的センスで物語ることに長けているのだ。
──と、ここで取材の時間切れとなってしまった。まだまだ聞きたいことはたくさんあるのに。ストフ氏のプロデュース作品については、神林長平のSF小説「戦闘妖精・雪風」の実写映画化の企画がこちらもやはりトム・クルーズが主演で進行中と聞くし、日本のアニメ『カウボーイビバップ』の実写映画化の企画も進行中だ。せめてもと、取材終了の挨拶の言葉と共に、『カウボーイビバップ』のメインキャラクターであるスパイク役は噂通りキアヌ・リーブスなのかどうか探ってみるも、「まだキャスティングは決まっていない」との素っ気ない回答……もし決まっていても教えてくれなかったかも。それならいっそ、犬のアインは登場するのかを聞けば良かった……などと後悔しつつ、今後の日本原作のハリウッド実写化にワクワクと期待する気持ちを抑えきれず、取材室を後にした。(文:入江奈々/ライター)
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は7月4日より全国公開される。
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