【映画を聴く】『攻殻機動隊ARISE』完結編のエンディングテーマに豪華メンバーが集結!/後編

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『攻殻機動隊ARISE border:4 Ghorst Stands Alone』
『攻殻機動隊ARISE border:4 Ghorst Stands Alone』

『攻殻機動隊ARISE』シリーズでは、エンディングテーマにのみ歌モノの楽曲が使用されている。『border:1 Ghorst Pain』の「じぶんがいない」ではsalyu×salyuが、『border:2 Ghorst Whispers』の「外は戦場だよ」では青葉市子が、そして『border:3 Ghost Tears』の「Heart Grenade」ではショーン・レノンがそれぞれヴォーカルとして参加しているが、作曲はすべてコーネリアス=小山田圭吾によるもの。

【映画を聴く】『攻殻機動隊ARISE』完結編のエンディングテーマに豪華メンバーが集結!/前編

今回の『border:4 Ghorst Stands Alone』における高橋幸宏を中心としたスペシャル・グループ、高橋幸宏&METAFIVE(小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)の「Split Spirit」も、基本的な成り立ちはこれまでの楽曲と同じ。近年、高橋幸宏のソロ活動やYMOとしての活動にサポートメンバーとして関わってきた小山田が高橋に声をかける形で実現したコラボレーションで、META FIVEは今年の1月に東京 EX THEATER ROPPONGIで行なわれた高橋のライヴのために集まった面々である。

SFと言えばテクノ、テクノと言えばYMO、YMOと言えば……なんて安直な連想をするまでもなく、『攻殻』のテーマをYMOの一員である高橋幸宏が歌う、というのは至極まっとうなキャスティングに思える。実際、『攻殻』と同じく士郎正宗の原作による2007年の映画『EX MACHINA(エクスマキナ)』で、高橋はHASYMO名義で細野晴臣と坂本龍一と共に主題歌を書き下ろしていて、“フルCGライヴアニメ”を謳うこの作品の世界観をクールなエレクトロニカ・サウンドで彩っていた(ちなみにこの映画のサウンドトラックには、コーネリアスとTOWA TEIも楽曲を提供している)。

で、本作での「Split Spirit」はどうかと言うと、これがテクノのひと言ではまったく片付けられない重層的な楽曲になっている。制作は、小山田圭吾の作ったベーシックトラックに各自が“手を挙げた順”に音を加えていく形で進められたという。それぞれ電気グルーヴ、ディー・ライトに在籍した時代からリスペクトを公言してきた砂原良徳とTOWA TEIという生粋のYMOチルドレンに、吹奏楽器とエレクトロニクスのミクスチャーに長けたゴンドウトモヒコとマルチリンガルならではの特異な言語感覚を持つLEO今井の個性が重なることで、楽曲に思わぬ奥行きが加わっている。高橋幸宏のヴォーカルと小山田のコーラス、LEOの合いの手も有機的に絡み合っており、聴くたびに発見のある緻密な音づくりがとにかく魅力的だ。

特別サイト「GHOST IN THE SHELL ARISE MUSIC BY CORNELIUS」(http://cornelius-kokakua-sound.com/#splitspirit)では、映像作家の辻川幸一郎によるこの曲のミュージックビデオを見ることができる。「Split Spirit(=分裂した魂)」という楽曲のテーマは映画本編と密接にリンクしたものだが、LEO今井の演じる“苦悩する男”から魂が離脱していく様子をひたすらコマ撮りした映像は、この楽曲の本質をとてもわかりやすく視覚化している。このサイトでは、これまでの『ARISE』シリーズのエンディングテーマ3曲と、シリーズすべてに使われているメインテーマのミュージックビデオ(すべて監督は辻川幸一郎)がアップされているが、そのどれもが『ARISE』の描く世界をどこかで補完するような必見の内容になっている。

なお、きたる11月24日、東京・日本科学未来館において「GHOST IN THE SHELL ARISE “border : less experience” sounds curated by CORNELIUS」という『攻殻機動隊』25周年を記念したイベントが行なわれる。タイトル通りコーネリアスがキュレーターをつとめるこのイベント、青葉市子やsalyu×salyu、高橋幸宏やMETAFIVEの面々が参加して『攻殻機動隊 ARISE』の世界を音で再現する特別な一夜となることは間違いない。(文:伊藤隆剛/ライター)

『攻殻機動隊ARISE border:4 Ghorst Stands Alone』は9月6日より公開中。

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