日本のソフトバンクに続き、米大手玩具メーカーのハズブロへの身売りも失敗──。ハリウッドの大手アニメーションスタジオ、ドリームワークス・アニメーション(DWA)の経営が岐路に立たされている。
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ドリームワークスは1994年にスティーヴン・スピルバーグ監督、大物音楽プロデューサーのデビッド・ゲフィン、ディズニーの映画部門の責任者だったジェフリー・カッツェンバーグの3人で設立。その後、2004年に実写映画部門(ドリームワークス)とアニメーション映画部門(DWA)が分離し、DWAは株式を上場した。
DWAは『シュレック』『マダガスカル』『カンフー・パンダ』を大ヒットさせシリーズ化して業績を伸ばしてきたが、近年は興行的な不振作が増えていた。今年は『ヒックとドラゴン2』が全世界で6億1900万ドル(1ドル115円換算で約711億円)の大ヒットを記録したものの、『Mr. Peabody & Sherman』が2億7300万ドル(約313億円)と伸び悩み。『Mr. Peabody』は製作費に推定1億4500万ドル(約167億円)を投入していたことから、DWAでは5700万ドル(約65億円)の損失を計上している。
大手スタジオの経営は、製作費の高騰から厳しさを増している。アクション大作ともなると製作費に1億5000万ドル(約172億円)以上かかるのはざらで、CGアニメも同様に製作費がかさむ。巨額の製作費を投入した作品が興行的に失敗すれば、大手スタジオの経営が揺らぐ。古くはエリザベス・テーラー主演の『クレオパトラ』が20世紀フォックスの屋台骨を揺るがし、マイケル・チミノ監督の『天国の門』がユナイテッド・アーティスツを倒産に追い込んだ。『タイタニック』も世界的な大ヒットがなければ、20世紀フォックスが存亡の危機にさらされたことだろう。
このため大手スタジオは単独では生き残っておらず、メディア複合企業に買収されたり、自らが複合企業に変貌して生き残りを図ってきた。ディズニーは同じ名前のウォルト・ディズニー・カンパニー、ソニー・ピクチャーズはソニーだが、あとは名前の異なるメディア複合企業の傘下だ。20世紀フォックスは21世紀フォックス(以前はニューズ・コーポレーションの傘下だったが、2013年にニューズと21世紀フォックスに分離され、映画部門は21世紀フォックス傘下となった)、ユニバーサルはコムキャスト、ワーナー・ブラザースはタイムワーナー、パラマウントはヴァイアコムだ。
映画部門の売り上げは会社全体の売り上げに比べると比率が低い。例えばウォルト・ディズニー・カンパニー。テレビ局のABCやスポーツ専門チャンネルのESPNなどを擁する「メディア・ネットワークス」部門、ディズニーランドなどが属する「パーク&リゾート」部門、映画の興行/パッケージ販売/テレビ放送権販売をあわせた「スタジオ・エンタテインメント」部門、キャラクターグッズ販売の「コンンシューマ・プロダクツ」部門、そしてゲームやネット事業などの「インタラクティブ・メディア」部門に分かれており、映画部門の「スタジオ・エンタテインメント」部門は14.9%にすぎない。
ただし大ヒット作が生まれれば会社全体への波及効果が大きくなる。『アナと雪の女王』が大ヒットすればキャラクターグッズが売れ、テレビ局のABCでは特別番組が企画され、ディズニーランドの新しいアトラクションとして登場するという具合。会社全体から見れば映画部門の売り上げは決して大きくはないが、欠かせない存在なのだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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