(…前編より続く)原作に思い入れあればあるほど、その良さが生かされているかとヤキモキさせられる元ネタ映画。今年もあまた作られた元ネタ映画からマイベスト10を決めたいと思う。
第5位『GODZILLA ゴジラ』
ハリウッドが再リメイクした『ゴジラ』。低予算ながら傑作の『モンスターズ/地球外生命体』の監督であり、ゴジラおたくというギャレス・エドワーズがメガホンを執り、骨太なリブート作品に昇華している。なんといっても、ハリウッドリメイク1作目のゴジラは爬虫類っぽかったが、今回のゴジラは着ぐるみゴジラを思わせるゴジラでいて、なおかつカッコイイのがいい! 原発事故を真っ向から描き、日本ではタブー視されている描写も盛り込みつつ、人間の傲慢さに警鐘を鳴らす『ゴジラ』精神も宿している。
・2014年原作あり映画ベスト10・前編/みんなをドラ泣きさせたメガヒット作の評価は?
第4位『闇金ウシジマくん Part2』
これも「ビッグコミックスピリッツ」が生み出した人気コミックを実写映画化した劇場版2作目。読んでいて、いや〜な気分になることこのうえない物語だが、怖いもの見たさという性質だけでなく、独自の美学を貫く闇金業者の丑嶋の人間性と作品の世界観についつい惹かれてしまう。そのテイストをこわすことなく、1作目に続いて2作目も映画化することに成功。惜しむらくはエピソードを欲張りすぎたことか。
第3位『捨てがたき人々』
ジョージ秋山原作の同名コミックを、大森南朋主演で映画化し、人間の欲と業を赤裸々に描く。ネガティブで無気力で自堕落、世の中への不満をセックスで吐き出そうとするようなどうしようもない主人公を魅力的に演じ、後半は怒涛の涙を流させられた大森南朋の役者としてのパワーにやられた。“生身の人間が演じる”という実写化の根本的な力もまざまざと見せつけられ、感服。
第2位『そこのみにて光輝く』
『海炭市叙景』の佐藤泰志の原作をもとに、ある男女の出会いを描いたラブストーリー。経済的にも社会的にも世間の底辺に生きる人間たちの物語で救いようのない状況だが、それぞれにとってまさしく“そこのみにて光輝く”存在であり、彼らが出会ったことに喜びを感じられる純粋なラブストーリーの魅力がある。この作品での綾野剛のオーラはハンパない。菅田将暉と池脇千鶴は原作イメージより底上げ感があって惜しい。
第1位『スイートプールサイド』
ベスト1は『そこのみにて〜』と迷ったが、やはり個人的趣味が勝ったため青春変態ストーリーの『スイートプールサイド』に。「惡の華」の人気漫画家・押見修造の初期作の映画化である。体毛が生えてこないことに悩む少年が、反対に毛深いことに胸を痛める少女から毛を剃ってほしいと頼まれる、ただそれだけの話。いやいや、思春期にとってはとてつもない大事件だ。このアブナくて悶々としていて、切なくてキュンとなる思春期の裏テーマを見ごとにすくいとっている。剃毛シーンを原作では屋内であるが、牧歌的な空き地にしたアレンジも映画ならではの美しさがあってよかった。
2015年も続々と公開予定の元ネタ映画。唸らせてくれる出来映えの作品に出会えることを期待しよう。
(文:入江奈々/ライター)
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
【関連記事】
・父・ジョージ秋山の原作マンガを映画化した秋山命が語る、父への思い【映画作りの舞台裏】
・映画化が相次ぎ脚光を浴びる作家・佐藤泰志、ブームの火付け役が語る苦難の道【映画作りの舞台裏】
・2014年興収1位はやっぱり『アナ雪』!『ポケモン』は伸び悩み『妖怪ウォッチ』と世代交代か【映画興収レポート】
・2014年ハリウッド10大ニュース(前編)/セクシー画像流出にアイス・バケツ・チャレンジなどがありました
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29