先日、当コーナー【映画を聴く】のテーマに沿った2014年の映画ベスト10をリストアップさせていただいたのだが、その上位5作品は下記の通り。
1位 ジャージー・ボーイズ
2位 グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの
3位 ストックホルムでワルツを
4位 インサイド・ルーウィン・デイヴィス
5位 FRANK
図らずも1〜3位が実在のミュージシャンを題材にした伝記、4位と5位も実在の人物をモデルとした実話ベースの作品ということで、あくまで個人的な感触ではあるけれど、2014年は音楽映画、とりわけ伝記ものに当たりが多かったと改めて思わされるランキングになった。
興味深いのは、いずれの作品も題材/モデルとして扱っている人物が、一般的にはそれほど有名でないこと。『ジャージー・ボーイズ』はフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ、『グッバイ・アンド・ハロー』はティム・バックリィとジェフ・バックリィの親子、『ストックホルムでワルツを』はモニカ・ゼタールンド、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』はデイヴ・ヴァン・ロンク、『FRANK』はダニエル・ジョンストンやキャプテン・ビーフハート、フランク・サイドボトムといった具合で、わりと熱心に音楽を聴いている人でなければ「この映画、見たい!」とは思わないんじゃないかと心配してしまうような、言ってみればニッチな作品ばかりだ。
しかし実際には、とりわけ『ジャージー・ボーイズ』や『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』は、とても大きな反響を呼んでいる。もちろんこの2作品はクリント・イーストウッドとコーエン兄弟という名匠が監督をつとめた作品なので、それ自体が品質保証になっているとも言えるのだが……。ちなみに筆者が『ジャージー・ボーイズ』を見に行った劇場では、となりの席に座った女子高生らしき2人組がクリストファー・ウォーケンのキレキレのダンスを見て「あのオジイさん、超ウケるんだけど」とご満悦で、逆どなりに座ったリアルタイマーらしき老夫婦がしみじみと余韻を反芻するのとは対照的ながら「これはこれで正しいリアクションだな」と思ったりした。(…後編へ続く)(文:伊藤隆剛/ライター)
・音楽系の伝記映画が充実した2014年。2015年は?/後編
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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