【日本映画界の問題点を探る】“権限を持つ女性スタッフ”の多さに驚き、日本とアジアの現場の違いとは?
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四角四面になりがちな日本に必要なのは“柔軟性”
【日本映画界の問題点を探る/女性カメラマン第一人者が実感したアジアの台頭 2】学生時代に8ミリ映画を作るようになり、ピンク映画やPR映画、テレビCMなどの助手を経て、31歳でカメラマンとして独立した芦澤明子(あしざわ・あきこ)。1994年の『よい子と遊ぼう』から映画にシフトして以降、これまでに幅広い監督の下で数多くの現場を経験してきた。では、日本とインドネシアの現場にはどのような違いを感じたのだろうか。
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「違いというのはあまりなかったですが、中心になっているスタッフが若いな、という印象は受けました。日本だと技師クラスの人たちはだいたい40代が多いですが、インドネシアだとほとんどが30歳くらい。そのせいか、インドネシアのスタッフは、疲れた顔をしていなかったですね(笑)。元気な国民性もあるとは思いますが、若いから勢いがあるのかもしれません」
ゆったりご飯タイムが良好な人間関係の源泉?
そしてもうひとつ、インドネシア人たちのエネルギーの源であり、モチベーションを維持するうえで欠かせないものといえば食事。
「たとえば、日本の現場で朝ごはんといえば、移動中の車内でおにぎりなどを食べることが多いですが、インドネシアではどんなに朝が早くても撮影の1時間前から朝ごはんタイムを取り、いろんな種類の食事が用意されています。最初は慣れなかったこともあり、『ご飯より早く撮影始めようよ』とか『それなら1時間多く寝かせてよ』と思ったこともありました。でも、ご飯を食べながらみんなでおしゃべりするから、人間関係がうまくいっているところもあるのかな、と。同様にお昼や夜ご飯の時間もしっかり取りますが、どんなに大変でもちゃんと休むことは良いことだと思いました。向こうでは、撮影の合間におやつや飲み物を運んでくる係もいるほど。本当に食べることにこだわっていますが、きちんと休憩を取ってお腹を満たしたほうが、そのあとの仕事の効率も上がりますよね」
一見すると、食事の時間は映画作りには直結していないように感じるかもしれない。しかし、体力とクリエイティビティが常に求められる映画の現場では、間違いなく大きな力となるため、労働環境の質を上げる意味でもこういった取り組みは積極的に見習ってほしいと思う。
「あと、インドネシアには柔軟性があると感じました。インドネシアといえば、イスラム教の人もいれば、キリスト教の人もいるような多民族国家。だからこそ、それぞれの宗教の事情などを尊重しながら、いろんなルールをうまくミックスして対応するのが上手なのだと気がつきました。さらに、インドネシアでは自国の映画だけでなく、ハリウッドやタイといったほかの国からの仕事も多く手掛けているので、そういったことが自然とできるのかなと。それに比べると、日本はドメスティックな仕事が多く、何かと四角四面になりがちなので、インドネシアのようにできたらいいですよね。働き方のルールも、『絶対に守らないといけない』ではなく、『まずは目安として取り入れる』くらいの発想から始められるといいなと思っています」
そのほかにも、インドネシアならではの現場を目の当たりにし、印象的だったこともあったと付け加える。
「これはエドウィン監督の組の特徴なのかもしれませんが、現場で主導権を握っているのは女性ではないかと感じるほど、女性スタッフが多くて驚きました。特に、プロデューサーやチーフ助監督、制作担当など、アシスタントではなく役職のある立場に女性が多いというのは、日本と違うところかもしれません。しかも、インドネシアの女性たちははっきりしていて強いので、『もっとがんばれ、男子!』と思ったくらい(笑)。あくまでもこれは私の主観ですが、女性のほうが男性を圧倒しているように見えたので、現場で男女の差を感じることはありませんでした」
(text:志村昌美)
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