武器は音楽、自由のために闘うバンドを生々しく描いた『トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜』/前編

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『トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜』
『トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜』

今日から公開される『トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜』は、サハラ砂漠の遊牧民であるトゥアレグ族のバンド、トゥーマストを追った音楽ドキュメンタリーだ。サブタイトルにあるカラシニコフとは、ロシアの軍人で銃器設計者であるミハイル・カラシニコフの名に由来する自動小銃のこと。そこからも分かるように、本作は武器をギターに持ち替えて闘う元レジスタンス兵士たちによるこのバンドの姿を生々しく描き出している。見た後にずっしりと重いものがのしかかるシリアスな内容だが、それ以上に強く直截的なメッセージと豊潤な音楽性によって作り上げられた彼らの力強い“レベル(反逆)・ミュージック”への関心が高まる作品に仕上がっている。

[動画]『トゥーマスト〜ギターとカラシニコフの狭間で〜』予告編

元レジスタンス兵士のムーサを中心としたトゥーマストやトゥアレグ族は何と闘っているのか? 彼らはもともとサハラ砂漠を遊牧するベルベル人系の民族だが、20世紀初頭のフランスによる植民地政策でサハラ砂漠が5つの国(アルジェリア、ニジェール、リビア、マリ、プルキナファソ)に分断されたことにより、“国家なき民族”となった経緯がある。彼らの闘いとは、そこに端を発した自分たちの苦しみと流浪の歴史に決着をつけるため、自由を勝ち獲るためのものである。

トゥアレグ族を再集結し、民族としてのアイデンティティを取り戻させようとしたのは、2011年に死亡したリビアの独裁者、カダフィ大佐。サハラ砂漠をフランスが植民地政策を始める前の状態に戻すという「サハラ共和国」構想を打ち出した大佐は、リビアのキャンプにトゥアレグ族の若者を集め、革命指導を行なったという。ムーサたちはこのキャンプにおいて、先のカラシニコフ自動小銃と共にギターを手にする。革命理論や戦術を学ぶと共に、ジョン・レノンやボブ・マーリーなどの他国のメッセージ性の強い音楽を聴き、大きな影響を受けたようで、同キャンプ内でトゥーマストの母体となるバンドを結成している。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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