2月に入っても『ベイマックス』が好調だ。1月26日時点の興収は70.3億円だったが、2月22日時点で86億円。この1ヵ月間で15.7億円を伸ばした。2月23日に発表されたアカデミー賞では、高畑勲監督作『かぐや姫の物語』を破って長編アニメーション映画賞に輝いた。同時上映の『愛犬とごちそう』も短編アニメーション映画賞を獲得しており、再び注目を集め、90億円を超える可能性は高い。
・『アメリカン・スナイパー』クリント・イーストウッド監督インタビュー
2月公開作の1位は『ミュータント・タートルズ』の9億円。化学物質による突然変異で人間のような姿に変化した4人のカメ(タートルズ)が、師匠からヌンチャクなどのマーシャルアーツを教わり、街を守るアクション映画だ。宣伝にあたっては様々な仕掛けを施した。
まず、日本語吹き替え版キャストにベッキー、カンニング竹山、そしてハリウッド映画の吹き替えは初挑戦となる泉ピン子を起用。ベッキーとカンニング竹山には大ヒット祈願イベントに出席してもらった。また人気スマホゲーム『モンスターストライク』とコラボ。ゲーム内に宿敵シュレッダーが現れるほか、映画の本編映像とゲーム画面が連動したテレビCMを稲川淳二を起用して作成。さらに、公開直前には出演者のミーガン・フォックスとウィル・アーネットが来日してジャパンプレミアが開催された。長期間に渡る宣伝もヒットを後押ししたようだ。
2位は『テラスハウス クロージング・ドア』の6.3億円。フジテレビの人気番組の映画化だ。恋愛バラエティという内容から公開をバレンタインデーの2月14日に設定。配給元の東宝によると、10代後半から20代の番組ファンを中心に集客した。
3位は『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』の6億円。ジョニー・デップが扮するのは、チョビヒゲがトレードマークの怪しい美術商チャーリー・モルデカイ。イギリスでゴヤの名画が奪われ、英国諜報機関MI5の依頼で彼は名画を捜して世界を駆け巡る。公開直前に来日してPRにあたったが、やや物足りない出足となった。
なお、2月21日から公開された『アメリカン・スナイパー』が初日2日間で3.3億円の興収をあげ、今年の公開作で最高のスタートとなった。本作は米海軍特殊部隊の元隊員で、米軍史上最強とうたわれた伝説的スナイパー、クリス・カイルの自伝を、主演ブラッドリー・クーパー、監督クリント・イーストウッドで映画化。全米で記録的な大ヒットとなっていることや、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など6部門でノミネートされた話題性から多くの観客を集めた。アカデミー賞の受賞は音響編集賞の1部門に止まったが、今後の興行にどう影響するだろうか。(文:相良智弘/フリーライター)
[2月公開作ランキング]
1位『ミュータント・タートルズ』9億円
2位『テラスハウス クロージング・ドア』6.3億円
3位『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』6億円
※『ベイマックス』86億円
(2月22日時点。ムビコレ調べ)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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