“デュラン・デュラン×デヴィッド・リンチ”という異色の組合せが話題のライヴ映像作品『デュラン・デュラン:アンステージド』が、今日から日本でも公開される。“80年代ニュー・ロマンティックの貴公子”と“カルトの帝王”、両者のファン層がどれくらい被っているかは分からないが、どちらのファンにとっても気になるコラボレーションであることは間違いないだろう。
映像の素材になっているのは、2011年リリースの彼らの13枚目となるスタジオ・アルバム『オール・ユー・ニード・イズ・ナウ』のリリースに合わせて行なわれたL.A.・マヤシアターでのライヴ。また、『アンステージド』は、アメリカン・エキスプレスが提供するオンラインコンサートのシリーズで、これまでも“アーケイド・ファイア×テリー・ギリアム”、“ジョン・レジェンド&ザ・ルーツ×スパイク・リー”、“コールドプレイ×アントン・コービン”など、さまざまなアーティストと映像作家がタッグを組んだ作品がオンライン配信されてきた。この“デュラン・デュラン×デヴィッド・リンチ”は、その第4回目にあたる作品だ。
本国イギリスでは現在も一定の人気を保ち、コンスタントにアルバムもリリースしているデュラン・デュランだが、こと日本では音楽的な評価は低く、“80年代の徒花”的に扱われることが多い。メンバーのルックスのよさや先鋭的なヴィジュアル・イメージがMTV時代と見事に合致して「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」や「ザ・リフレックス」、「007 美しき獲物たち」(同名映画の主題歌)といったヒット曲を連発。カルチャー・クラブやヒューマン・リーグらとともにニューロマンティックの旗手としてそのブームの中心的役割を担い、日本でもヴィジュアル系バンドなどに大きな影響を与えているが、耳の肥えた音楽リスナーからは「JAPANは好きだけどデュラン・デュランはちょっと……」といった具合に、いまも昔も冷遇されている。
メンバーの入れ替わりが多く、決して順風満帆ではないものの、先述のようにグループは80年代のブームを過ぎても停滞することなく地道に活動を続け、2000年代に入ってからは全盛期のメンバーで再集結。この映画でも多くの収録曲が歌われる2011年のアルバム『オール・ユー・ニード・イズ・ナウ』は、全英11位という好セールスを記録している。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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