映画界にまつわる数字の秘密と、宣伝文句の変遷を2回に渡って解説します。1回目は「数字の秘密」。
まず映画界にまつわる最大の秘密が「日米で週末興行成績ランキングの発表方法が異なる」ということだ。
米国ではトップ10の順位と合わせて興行収入も発表されるのに対し、日本では上位の一部のヒット作品を除いて興行収入が発表されない。米国では毎週末の興収が加算されていくため、その時点での作品の総興収が明確だ。一方日本では一部のヒット作は「●月●日で観客動員数100万人、興収15億円突破」などと発表されるものの、大半の作品は総興収が不明。総興収10億円以上の作品のみ、翌年の1月下旬に映連から発表される(近年では東宝のみ半年に1度、自社が配給した「上半期作品別興行収入(10億円以上)」を発表している)。
米国では映画関連の調査会社が定期的に観客への調査を行っていて、公開前には興行収入予測も発表している(日本でも調査を行っているが、公表はされていない)。
ヒットの目安だが、日本では10億円。なぜなら映連が総興収10億円以上の作品のみ発表するから。2014年なら邦画31本、洋画18本。そのうち興収30億円以上は邦画9本、洋画5本なので「30億円が年間トップ10入りを狙える大ヒット」とよべるだろう。一方、米国では2014年なら興収1億ドル以上が33本。ヒットの目安は1億ドルだろう。興収2億ドル以上が13本なので「2億ドルが年間トップ10入りを狙える大ヒット」とよべるだろう。
全国公開の大作は明確なヒットの目安がある一方、ミニシアターを中心に公開されるアート系作品はヒットの目安が難しい。公開規模がばらばらだからだ。ミニシアター全盛期は東京都内のミニシアター1館のみの公開なので、「興収5000万円以上で大ヒット、1億円を超えれば年間1位を狙えるメガヒット」といった目安があったが、シネコン時代に突入すると、アート系作品の人気が落ちたこととあいまって、目安が難しい。
ちなみに、「アート系作品の大ヒット作」と呼べそうなのが2012年公開の『最強のふたり』。TOHOシネマズ シャンテを中心に全国48館のスタートで、その後順次上映館が全国に広がり、最終的には興収16.5億円をあげた。今年で言えば『セッション』。TOHOシネマズ新宿を中心に16館のスタートで、順次上映館が全国に広がり、5億円を突破している。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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