(…前編より続く)テッドの案件を担当することになったのは20代の新米弁護士のサマンサ。どう見ても頼りなく、テッドたちも不安を隠さないが、思わぬ共通点で彼女と意気投合し、勝ち目のなさそうな法廷闘争に挑む。前作でジョンの恋人役だったミラ・クニスに代わって、新しくヒロインを務めるのはアマンダ・セイフライド。キュートでコメディ・センスもあるミラの後任というハードルを楽々とクリアして、シモから自虐までどんなネタにも対応する柔軟な女優魂を見せている。サマンサは映画を含めたポップ・カルチャー音痴という設定で、テッドたちのオタク話が全く通じず、とんちんかんな反応をするのが可笑しい。人権をめぐる闘いも、あくまでもテッドたちの流儀を貫くバチ当たりなドタバタで笑わせながら、はっきりとしたメッセージを伝えている。
・【週末シネマ】(前編)『テッド2』は型破りな啓蒙映画!? エロ・テディベアが教えてくれる平等の尊さ
今回はボストンからニューヨークへ向かうロードムービーでもあり、ニューヨークではコミコンの会場が舞台になる。玩具メーカーのハズブロや他作品のキャラクターが実名で気前よく登場するが、テッドとジョンを語るうえで欠かせない『フラッシュ・ゴードン』をはじめ、こうしたディテールのぬかりなさは作品の大きな魅力だ。モーガン・フリーマンなど大物俳優や著名人の出演も、特にアメリカ在住者にはたまらないくすぐりだろう。
前作に較べると、ぬいぐるみがこんなことをする、あんなことをする、というスタイルは控えめになっている。もちろんテッドはいろいろやらかすのだが、そもそもぬいぐるみがやっているのでなければ、シャレにならないことばかり。『テッド2』の描写は、いうなればテッドの意志を尊重し、人間とぬいぐるみを差別化しない手法を取っている。ゆえに、テッドの言動は前作以上に不穏当(まだジョークにするには生々しい出来事も躊躇なく取り込む)で、グサリと刺さる。だが、不適切な発言のオンパレードで、とんでもなく不謹慎なのに、見ているうちになぜか平等の尊さについて考えさせられてしまう。型破りの啓蒙映画だ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『テッド2』は8月28日より公開。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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