『ヒューマン・ハイウェイ 〈ディレクターズ・カット版〉』
アメリカン・ロック界の至宝、ニール・ヤングが300万ドルの身銭を切って監督/脚本/主演(監督と脚本はバーナード・シェイキー名義)をつとめた1982年の映画『ヒューマン・ハイウェイ』が、ディレクターズ・カット版として上映されることになった。新宿シネマカリテなどで行なわれているシリーズ企画「日本初公開! 世界のどす黒い危険な闇映画」の一環として公開されるもので、熱心なニール・ヤング・ファンからも長年黙殺されてきた怪作中の怪作である。1995年に一度VHSでリリースされているが、DVD/Blu-ray化は未だ実現していない。
ポスターやフライヤーのビジュアルに放射性物質を表すハザードシンボルや“A NUCLEAR COMEDY”のキャッチコピーが踊っていることからも分かるように、本作のテーマはずばり、反核。主人公は自動車修理工のライオネルで、ニール・ヤング自身が意外にもコミカルで自然な演技を見せている。放射能に汚染された核廃棄物処理場のある町で暮らしながら、現実を理解せずコンサートを開いたりする夢ばかり見ているライオネルとその仲間たちが、最終的には原発事故に遭い、地球もろとも吹っ飛んでしまうという、この上なくブラックで救いのないコメディだ。
ニール・ヤング以外にもニューウェイヴ・バンド、DEVO(ディーヴォ)の面々やデニス・ホッパーがキャスティングされるなど話題性は高かったものの、当時としてはあまりにメッセージ色が強く前衛的だったために、十分なディストリビューションは得られずじまい。作品としての評価も“売れっ子ミュージシャンの道楽”といったところから抜きん出るものはなかったという。本人もその仕上がりには満足していなかったようで、88分あったオリジナル版を80分に再編集。2014年のトロント国際映画祭にこのディレクターズ・カット版を正式出品するに至った。(後編へ続く…)
・【映画を聴く】(後編)ニール・ヤングが自腹で撮った反核映画『ヒューマン・ハイウェイ』がついに日本初公開!
『ヒューマン・ハイウェイ 〈ディレクターズ・カット版〉』は9月12日〜9月25日公開。
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