映画界にまつわる数字の秘密と、宣伝文句の変遷を2回に渡って解説する2回目は「宣伝文句の変遷」。
まず宣伝文句で古くから使われているのが「全米No.1ヒット」。米国で週末興行成績ランキング1位を獲得した作品が使う“常套文句”だが、あくまで週末なので1年間に52本の「全米No.1ヒット」が存在することになる。
そこで近年では「世界46か国でNo.1を記録」「『アナと雪の女王』を超えて全世界歴代興行収入トップ10入り。歴代1位の『アバター』、2位の『タイタニック』に迫る勢い」(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のプレスシートより)と、「全世界」や「歴代興行収入」という表現を使う作品が増えている。
さらに『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』では「世界34カ国初登場No.1!! 32カ国でシリーズ史上最高&27カ国でトム・クルーズ史上最高オープニング記録!」(配給元パラマウントのニュースリリースより)と「シリーズ史上最高」「トム・クルーズ史上最高」という表現も登場している。
一方、ヒットとはやや縁遠い感動作の宣伝で最近目にするのが映画賞の受賞数だ。以前なら「アカデミー賞最有力」や「アカデミー賞●部門でノミネート&受賞」が多かった。だが、アカデミー賞だけでは物足りない、あるいはPR力が弱いと考えられているのか、映画賞受賞数を強調したり、受賞した映画賞をずらりと表記する宣伝文句が増えている。
例えば、今年アカデミー賞作品賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を見てみよう。ノミネート発表後のチラシには「アカデミー賞最多9部門ノミネート」という表記の他、「ゴールデン・グローブ賞主要2部門受賞」「世界で総計114部門受賞」(2015年2月8日現在)と書かれ、受賞した全ての映画賞が記載されている。
さらに、最近目立つのが「ロッテン・トマト」の数字の記載だ。ロッテン・トマトとは米映画評集計サイト「RottenTomatoes.com」のこと。全米の雑誌や新聞、映画サイトなどに掲載される100数十〜200以上の批評を「良い(Fresh)」「悪い(Rotten)」に分類し、良い比率をはじき出すもの。例えば『セッション』ではチラシに「世界映画批評No.1サイト『ロッテン・トマト』で驚異の96%がフレッシュ」、『ナイトクローラー』では「米映画評論サイト ロッテン・トマト 満足度95%」とうたっている。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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