「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「デジタルシネマ」
●オススメBlue-ray『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』
キアヌ・リーヴスが企画・製作し、自らナビゲーターも務める『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』は、映画ファンならば必見のドキュメンタリーだ。デジタル化の波が急速に押し寄せ、大きな転換点に直面している映画産業の現在。そして10年後にはフィルム作品は全体の5%に満たないとまで言われる未来を見据えながら、映画界を代表する錚々たる顔ぶれが登場、次々と飛び出すさまざまな意見がとても興味深い。
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タイトルにもある「デジタルシネマ」とは、フィルムを使用せずデジタル式ビデオカメラで撮影、その後の編集作業から配給・上映に至るまでデジタル・データを使用する映画のことである。「デジタルシネマ」には標準映像規格が定められており、解像度については2K(2画素数2048×1080)と4K(画素数4096×2160)の仕様がある(現状では2K上映が主流)。
「デジタルシネマ」の急速な普及は、撮影、編集や特殊効果等ポスト・プロダクション作業にデジタル化が進んだことに加え、映画産業の縮小に対する合理化の流れが後押ししたことが挙げられる。とりわけ制作面での効率化はフィルム時代の比ではなく、映画会社各社が製作本数を増やし収益を上げるという経済的効果も生み出すことにもなったのだ。
「デジタルシネマ」の上映用データ・ファイルは、DCP(デジタルシネマ・パッケージ)と呼ばれる。これは漏洩防止のために暗号化された映像・音声ファイルであり、HDD(ハードディスクドライブ)などに格納して劇場へ納品される。同時に上映日と場所を設定した暗号キーKDM(キー・デリバリー・メッセージ)を発行。劇場ではDCPをシネマ・サーバーに取り込み、KDMキーで暗号を解除。サーバー上でデータ・ファイルを再生しながら、デジタル・プロジェクターによって映写を行なうことになる。フィルムと異なりDCPは可視できないため、作成はもちろん、運搬や保管にも細心の注意が必要になる。
とはいえ、これまで悩まされてきた映写機でのフィルム磨耗による品質劣化がなく、常に鮮明な映像品質で上映できるのが特長のひとつとなっている。ちなみに日本においては、上映館の97%を「デジタルシネマ」が占拠(ミニシアターを含む)。フィルム上映館は消費税以下の数字となっている。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は10月9日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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