「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
【夏休み企画】
夏休み、お家で映画鑑賞!というご家族も多いのでは。でも、小さな子どもの3D鑑賞には注意が必要って知っていましたか? 今回は、安全に3D映像を楽しむためのガイドラインをご紹介!
●今回のお題「3D安全ガイドライン」
●オススメBlue-ray『モンスターズ・ユニバーシティ』
今回紹介するのは、3D(3DC=3Dコンソーシアム)安全ガイドラインという用語。これは3Dに関わる視聴者、制作者、機器製造業者のためのルールブックである。この3D安全ガイドラインを参考にしながら、世界中の3D関係者がレポートを発表している。
3D映像を観る場合、右目と左目から入る視点の異なる2つの映像を脳の中で融合することで、はじめて立体を感じることができる。しかしUCLAジュールスステイン眼科研究所のスティーヴン・ニュシノウィッツ博士によれば、3D映像を観たことのある約20%の人が何らかの問題があると感じているという。さらに約10%の人が、3D映像を観ても立体に見えないという研究結果を出している。
人間には奥行きを認識する立体視能力が備わっているが、その能力が生まれ持って弱い人がいるのだ。日常生活では特に問題はないが、3D映像を立体に感じることができない。それどころか立体演出を施されている3D映像を見ても、視覚がさらに奥行きを見ようと作用してしまい、その多くの人は頭痛や吐き気に悩まされるというのである。
それから、子どもの3D鑑賞に関しては、視覚機能の発達に注意を払いたい。(個人差はあるが)通常では視覚機能は、6歳までの間に完成される。立体視機能に関しては、平均5歳までに成人同等となる。視覚機能の発達段階において(3Dを含む)極度に演出された映像を与えると、健全な視覚発達に影響を与える可能性があり、十分な注意が必要だ。低年齢のお子さんとの3D鑑賞では、大人の管理のもとに鑑賞の可否判断、時間制限をするのが望ましい。
たとえばディズニーでは、必ず家庭鑑賞用に3D修正が施される。大スクリーンのために演出された飛び出し、奥行き等の演出を修正するのである。また過度な動的演出があれば、可能な限りより2D的な映像に修正される。
とくにアメリカではガイドラインが厳しく設定され、あの『アナと雪の女王』ですらブルーレイ3Dは発売されていない(2Dのみ)。識者の見解では、もっとも安心して推薦できるブルーレイ3Dのひとつは、『モンスターズ・ユニバーシティ』ということである。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は8月21日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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