「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映画の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「3D(その1)」
●オススメBlue-ray『エクソダス:神と王』
2Dでは『ゼロ・グラビティ』の魅力の3割も味わえない。こうオスカー監督アルフォンソ・キュアロンが語るように、息子ホナスとの脚本第一稿執筆の段階から3D制作を強く意識していた。またリドリー・スコットも旧約聖書の世界を最新3D方式で映像化した『エクソダス:神と王』について、「当初から3D公開を念頭に入れて製作した作品。前作『プロメテウス』の時よりも格段と進化した3D技術を採用しており、ぜひとも3Dで鑑賞してほしい」と語っている。
業界では『アバター』公開後(2009年12月)の2010年を”3D元年”と位置づけて今日に至っているが、3Dの歴史はいつから始まったものなのだろうか。意外と一般には知られていないことだが、3Dの歴史は驚くほど長い。
3D=スリー・ディメンション(three dimensions/3次元)という言葉が初めて映像目的で使われたのは、19世紀後半のことである。映画における3Dは、正式には「ステレオスコーピック・イメージ」=2眼式立体映像と呼ばれており、3D作品のエンドロールで頻繁に登場する「ステレオ」という表記は正式名称に由来するものだ。
20世紀に入って10年以上に渡り実験が続き、1915年に短編映画数本が正式に製作され、1922年には長編映画のリリースが可能となった。アベル・ガンスの歴史大作「ナポレオン」(26年)も3D公開を念頭に入れていたが、最終的に断念、スタジオ関係者のみにプレミア上映されるに止まっている。
3D方式はアナグリフ方式。これは左右異なる角度から撮影した映像を、それぞれ赤と青の光で重ねて再生、左右に赤と青のカラーフィルタのついたメガネで鑑賞するものである。
当時の3D映画製作の重要な目的のひとつは、音を発するラジオの登場への対抗策であった。しかしご存じのように1920年代後半にトーキー革命が起き、ようやく実用化に漕ぎつけようとした矢先の3Dに水を差すことになったのである。
1930年代には、アナグリフ方式に代わるフルカラー3D画像を可能にした偏光フィルタ方式が開発された。しかし3Dは長きにわたり沈黙を続け、銀幕から姿を消すことになる。次に3Dブームが訪れるのは、1950年代のことであった……。この続きは次回。
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