「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「デジタルシネマカメラ」
●オススメBlue-ray『ゴーン・ガール』
前章「デジタルシネマ」のコラムで「フィルムを使用せずデジタル式ビデオカメラで撮影」と記したが、現在主流となっているカメラの総称をデジタルシネマカメラという。なぜ「デジタルカメラ」ではなく、「シネマ」が付くの?と思われる方も多いはずだ。
ごくごく簡単に解説すれば、映画撮影の標準=35mmフィルムの1コマの大きさに近い解像度を得られるカメラだからである。正式に基準となるのはスーパー35サイズ。スーパー35に関しては以前コラム解説しているが、ここでおさらいしておこう。
スーパー35は専用カメラを用い、通常の35mmフィルムのサウンドトラック領域までを使って撮影する方式(撮影時にはサウンドトラック部分は必要としないため)。通常の35mmサイズ(有効画面=横22mm×縦16mm)に対し、24mm×14mmの有効面積となる。
あらゆるデジタルカメラは、心臓部と言える撮像素子を有している。撮像素子とは人間の目で言えば網膜であり、撮影機器では光をデジタルに変換するためのセンサーを指す(●●万画素と表記される有効画素数=撮像素子の画素数)。
デジタルシネマカメラはスーパー35の有効面積サイズ相当のセンサーを搭載し、画素数に換算すれば4520×2540ピクセルとなり、前章で解説したデジタルシネマ向けの4K規格=4096×2160ピクセルをクリアする。こうした大センサーを使うことにより、フィルムに近い描写が可能となったわけだ。従来の映画用カメラと同じ感覚で、高性能レンズや撮影用アクセサリーが揃えられる利点もある。
しかし多くの監督や撮影監督は、35mmフィルムの解像感を表現するためには、少なくとも6K解像度=6144×3160ピクセルが必要と考えている。デヴィッド・フィンチャーもそのひとりで、話題作「ゴーン・ガール」では劇場映画では世界初となる全編6K撮影を敢行している。デジタルシネマパッケージ(DCP=前章参照)は2Kと4K、ブルーレイ解像度は2K(フルハイビジョン)にダウンサイズされるが、高解像度6K撮影の恩恵は随所に生かされている。より高解像度で撮影された作品は、たとえ2K解像度で鑑賞したとしても映像情報量が多く、より高い解像感を得られるのである。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は10月23日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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