「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「第2班監督」
●オススメBlue-ray『ホビット 決戦のゆくえ エクステンデッド・エディション』
昨年末に公開された『ホビット 決戦のゆくえ』のエクステンデッド・エディション=E.E.版(未公開映像19分を追加)が11月に発売される。多くの話題を提供した『ホビット』シリーズであったが、そのひとつは第2班監督をアンディ・サーキスが務めていることだ。
サーキスと言えば、『ロード・オブ・ザ・リング』から続くゴラムをはじめ、モーション・キャプチャーを用いた映画に欠かせない俳優である。
第2班監督と助監督をよく混同する人がいるが、実際の役割は大きく異なっている。助監督=アシスタント・ディレクターとは、監督のまさにアシスタントを務めるスタッフのことだ。日本映画では3人構成が一般的。さらに役割によって呼び名があり、チーフ、セカンド、サードと呼称される。
仕事の分担が細密化されている海外作品(特にハリウッド映画)では、一般的にはチーフとセカンドまで。日本映画でサード以下が担当している雑用は事細かに分別され、専任の担当者が配属される。日本映画でのチーフやセカンドが担当する仕事、たとえばエキストラの演技指導等も分別作業に含まれている。
これに対して第2班監督=セカンド・ユニット・ディレクターは、厳密には協力(共同)監督と呼ばれる演出家を指し、徹底した作品の読解力と演出力が求められる。作業の幾つかを具体的に紹介すると、まず状況設定ショット(エスタブリッシング・ショット)の演出。これはシーンの冒頭などで、場所の状況や登場人物の位置関係(スタンドイン=代役が使われる)を認識させるためのものである。
他にはシーンを理解させるために挿入される画面=インサート・ショットの演出。例えば主人公が手紙を読んでいれば、その文面のアップである。そしてカットアウェイの演出。ショットAとショットBがうまく繋がらない時、物語の流れを妨げずに回避する挿入ショットであり、時に実景であり、時には動く手のアップであったりする。
こうした第2班監督は、アクション映画の場合ではスタント・コーディネーターが兼任する場合も多い。近年ではスティーブン・ソダーバーグが、『ハンガー・ゲーム』の第2班監督を務めて話題になっている。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は11月13日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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