「動画配信サービスの戦国時代到来!」と題した3回連載のコラム。3回目は「動画配信サービスの勢力図と展望」について解説。
・【興行トレンド】Netflix、アマゾン…動画配信サービスの戦国時代到来!(1回目)
ネットフリックスの日本進出で脚光を浴びている動画配信サービスだが、視聴形態によって大きく2つに分かれる。1つは「定額見放題」で、もう1つが「作品ごとの課金制」だ。今脚光を浴びているのが前者の「定額見放題」。実は音楽では「定額聴き放題」が今年、普及元年といわれており、エイベックス、LINE、アップル、そしてグーグルが次々とサービスを開始した。動画の世界でも同じ状況が起きているといえる。
定額見放題の動画配信サービスを見ると、会員数で最も多いのが「dTV」。エイベックスとNTTドコモが共同で運営するサービスで、BeeTVの名称で09年にスタートした。約460万人という会員数を生かし、実写映画『進撃の巨人』と連動したオリジナルドラマを配信するなど独自コンテンツに力を入れている。また、他のサービスにはない特徴が音楽ライブの生配信。AAAや三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、浜崎あゆみなど人気アーティストのライブの生配信を行っている。
次がUULA(ソフトバンク&エイベックス)、ビデオパス(KDDI)と携帯電話のキャリア系サービスが続き、米国発の「Hulu」が続く。UULAも音楽映像に力を入れており、人気アーティストのミュージックビデオが多数楽しめる。
ネットフリックスより早く11年に日本進出したHuluは、14年に日本テレビの傘下に入り、日テレ系のドラマやアニメが充実。さらに同社オリジナルコンテンツとしてアートバラエティ『木梨憲武 Inspiration Only』や唐沢寿明主演の刑事ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』を配信している。
9月下旬からサービスを始めたアマゾンの狙いは他社とは異なる。同社の動画配信サービス「プライム・ビデオ」は、有料サービス「アマゾンプライム」のおまけ。「アマゾンプライム」はインターネット通販の日時指定の配送サービスなどが使い放題。年会費が3900円で月額換算では325円となる。アマゾンはネット通販のサービスに動画サービスを上乗せして相乗効果を狙う戦略だ。
DVDレンタル大手のTSUTAYAとゲオも参入。TSUTAYAは動画配信のほか、動画配信とネット宅配レンタルを組み合わせたサービスを開始。ゲオはエイベックス・デジタルと提携して16年2月から始める。動画配信のユーザー向けに、店舗でのレンタルや宅配レンタルの優遇サービスも計画している。
ネットフリックスの日本進出で大きな影響が出そうなのが映画の「ウィンドウ」だ。ウィンドウとは、映画を劇場公開した後、BD・DVD市場や放送メディアから収益を最大限に得ることができるよう、各メディアへのリリース時期をずらし、互いのビジネスを侵食しないようにコントロールする戦略のこと。
現状ではBD・DVDリリース、作品単体の課金制動画配信→WOWOW、スターチャンネル→他のCS放送チャンネル→定額制動画配信サイトという順でリリース・放送される。定額制動画配信の権利は非独占契約が中心で、どのサイトでも契約が可能だ。
ネットフリックスがきっかけで競争が激化しており、動画配信各社では有力作品の配信権を独占契約で獲得しようという動きが出ているようだ。さらに映画会社によっては、動画配信サイトのウィンドウの順番をWOWOWやCSチャンネル並みにして権利料を高く売ろうという動きもあるようだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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