「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「カットとショット」
●オススメBlue-ray『セッション』
低予算の独立系映画ながら高い評価を受け、アカデミー賞助演男優・音響(録音)・編集賞の3部門に輝いた『セッション』。10月末に発売されたブルーレイはご本家・米国盤よりクオリティが高く、とりわけ96kHz/24ビット仕様のサウンド・パフォーマンスが素晴らしい。話題になったクライマックスの演奏場面は、流れるような編集テクニックが高く評価され、オスカー受賞の後押しとなったのである。
編集とは撮影された映像の断片をつなぎ合わせ、1本の映像作品にする作業である。今ではコンピューターを使用するデジタル編集の時代となったが、編集の基本プロセスはほとんど変わっていない。かのオーソン・ウェルズは「私の映画の出来不出来は、編集室で決まる」と語った。編集スタジオに籠り切りになる地味な作業であるが、実は映画独自の文脈を作る上で決定的な意味を持つ作業なのである。
さてここで本題。「映像の断片」と前述したが、日本ではその断片を「カット」と呼ぶことが多い。しかしこの使い方は正式には間違いであり、ここでの正しい用語は「ショット」である。「ショット」は映像の構成上の最小単位を指し、連続して撮影された映像の始まりから終わりまでを1ショットと数える。
これに対して「カット」とは、「ショット」に対する和製造語だ。通常「カット」とは編集することを指す場合が多く(編集=カッティングとも呼ばれる)、ディレクターズ・カット版ならば監督編集版という意味となる。また「ジャンプカット」という用語があるが、これは映像の連続性を無視して、突然に場面や話の展開が飛んで見えるような編集の繋ぎ方をいう。
編集という意味から離れて「カット」が使われる場合もある。たとえば監督が使用する「カット」という用語は、ひとつのショットの撮影が終了したことを意味するものだ。
補足しておくと「シーン」とは、映画の一場面のことであり、「ショット」の集合体を意味する。そして「シークエンス」とはシーンと同等、あるいは複数の「シーン」をまとめ上げたものを指す。
『セッション』ならば、85分53秒からがカーネギーホールでの「シークエンス」であり、91分54秒からが演奏「シーン」、構成される「ショット」数は229となる。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は11月27日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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