「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「視野角 2」
●オススメBlue-ray『ミニオンズ』
年末・年始にかけて、ホームパーティーの回数も増える今日この頃。みんなでワイワイ、ガヤガヤ、大画面テレビの前に集合して映像作品を楽しむことも多くなるはずだ。しかし正面に座った人はストレスなく楽しめるが、端の椅子や寝転がる人は「映像が暗い」「なんだか色が薄い」と感じてしまうことが多い。
これはテレビに限らず、プロジェクターとスクリーンの組み合わせでも同様。いずれも画面を(上下左右の)斜め方向から見ると、明るさが減少したり、色調が変化する現象が起きる。以前、人間の「視野角」について解説したが、画像が正常に見える角度も「視野角」と呼ばれ、画面中心から正常に見ることのできる範囲を扇形で表した中心角の大きさを指す(上下の視野角と左右の視野角がある)。つまり視野角が小さいほど、斜め方向から画面も見えにくくなるわけだ。
たとえば液晶テレビの場合。液晶テレビの基本的構造は、液晶パネルとその背後にある白色光を出すバックライトから成り、バックライトの光が液晶パネルを通過すると映像が表示され、液晶パネルにある赤・青・緑のカラーフィルターを通過すると色が表現される仕組みである。その原理上、鑑賞位置によって明度減少、色調反転、特定色の視認不足が生じてしまうのだ。
こうした画面の上下左右の映像再現能力、すなわち「視野角特性」は製品購入時にも大切なポイントとなる。たとえば液晶方式は、TN方式、VA方式、IPS方式に大別されるが、視野角特性のみで優劣を競えば(1)IPS (2)VA (3)TNという順になる。しかしそれぞれその他の映像再現力にメリット、デメリットがあるので、購入の際に店頭スタッフとよく相談することをお勧めしたい。
画面サイズの大型化の流れについてはいままでも解説してきたが、大画面4Kテレビ、100インチ超のスクリーンの導入は、画面の視野角を稼ぐ良案としても成立することを憶えておいてほしい。画面の正面から水平に見据えないと立体効果が現れにくい、3D再生ならばなおさらだ。ご家族みんなで楽しみたい3D『ミニオンズ』などは、再生機器の視野角特性をよく理解して鑑賞されたい。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は12月18日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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