(…前編より続く)
面影を追い求めるような展開が胸にジーン
故・森田芳光監督が急逝してから丸4年が経ったこの冬、森田監督作の続編が公開される。27本もある監督作のなかでも特別な作品である、35年も前の劇場デビュー作『の・ようなもの』の続編『の・ようなもの のようなもの』だ。
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筆者が『の・ようなもの』を見たのは20歳そこそこの青春時代。『家族ゲーム』や『ときめきに死す』はもちろん、アイドル映画系の『メイン・テーマ』でさえ森田ワールドにしてしまう森田芳光監督の劇場デビュー作に興味が沸いて見てみたのだ。
いま見ると、80年代らしいアンニュイ感とポップ感が入り混じったのんきな青春映画と見てとることもできる。でも、当時は自分自身のモラトリアムな青春と重なったせいか、とてもやるせない思いに駆られた。森田監督自身の焦燥感とシンクロしたせいもあるんじゃないかと思う。
『の・ようなもの』の主人公・志ん魚(しんとと)は芽の出ない落語家で、師匠や兄弟弟子とじゃれあいながら、恋愛も中途半端なら、地に足のつかない生活も宙ぶらりんなまま日々を過ごしている。学生時代に落語研究会にいた森田監督がこの作品を撮った30歳の頃は映画館でもぎりをしていたそうだ。
主人公に感情移入させられる作風ではないが、飄々として見える志ん魚の根底にあるもやもやとした暗然たる思いが見えるような気がした。
続編、『の・ようなもの のようなもの』の主人公もまた落語家で、脱サラして落語の道に入ったものの芽の出ない志ん田(しんでん)だ。メガホンを取るのは『の・ようなもの』でも助監督を務め、以降30年の間、森田監督の遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』まで助監督・監督補として森田作品を支え続けてきた杉山泰一だ。
物語は志ん田が以前一門にいた兄弟子で、今は行方のわからない『の・ようなもの』の主人公であった志ん魚を探し出し、ふたたび高座に復帰させようと四苦八苦する、というもの。まるで『の・ようなもの』の、また森田監督の面影を追い求めるように展開していく。
幕開けから、ベンチでイチャつくカップルの横に空気を読まない主人公が腰を下ろす『の・ようなもの』のオープニングを想起させるシーンから入っていく。志ん魚はもちろん、『の・ようなもの』でデビューした伊藤克信が扮し、栃木弁訛りの彼の故郷は日光という設定も『の・ようなもの』と同じ。つかみどころのない志ん魚の人間味もそのままだ。(後編へ続く…)(文:入江奈々/ライター)
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『の・ようなもの のようなもの』は1月16日よりされる。
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