●仙台に実在した名曲喫茶
現在公開中の『無伴奏』は、小池真理子の“恋・三部作”のひとつである同名小説が原作。日本中が反戦運動や学園紛争に揺れる1969年から70年代初頭、仙台を舞台とした著者の自伝的な恋愛小説を、矢崎仁司監督がていねいに映画化。成海璃子ほか池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜が噎せ返るほど濃密かつ甘美な関係性を体当たりで演じ、見る者に深い余韻をもたらす。
タイトルにピンときた人もいると思うが、この映画ではさまざまな音楽が通奏音のように流れる。「無伴奏」は仙台に実在した名曲喫茶で、バッハの有名な「無伴奏チェロ組曲」から採られた名前通り、おもにバロック音楽のレコードをかける店だったという。1981年に閉店してしまったものの、いまだにその存在を懐かしむ音楽ファンが多いという伝説的な喫茶店だ。
成海璃子の演じる野間響子は17歳の女子高生。“仙台のゲバルト・ローザ”を気取って友人たちと制服廃止闘争委員会を立ち上げ、アメリカのプロテスト・ソング「勝利を我らに(We Shall Overcome)」を口ずさんでみたり、デッサン・ノートに思いの丈をポエム風に綴ってみたり。自分なりに何かを始めようとしているが、実のところ確かな政治的ポリシーを持っているわけではない。そんな中、面白い人々が集うと評判の「無伴奏」に足を運び、ぎこちなく煙草をふかしていると、大学生の堂本渉(池松壮亮)と関祐之介(斎藤工)、その恋人のエマ(遠藤新菜)の3人に声をかけられる。渉に強く惹かれながらも、彼と祐之介の間に漂う不思議な空気に響子は戸惑いを覚える。
映画化にあたって原作者である小池真理子から矢崎監督に出されたリクエストは2つ。仙台を舞台とすることと「無伴奏」の店内をできるだけ忠実に再現すること。後者については納得のいくロケーションが見つからず、セットとしてゼロから作り上げられている。店内のレイアウトはもちろん、スピーカーなどのオーディオ機器もほぼそのまま再現されており、そのリアリティに原作者本人も感激したという。また、矢崎監督は彼女の著作をエッセイまで含めて細かく読み込んで検証し、万年筆などの小道具ひとつひとつにまでこだわったそうだ。その結果、響子らの言葉遣いや衣服、音楽や文学の嗜好にはとても自然な説得力があり、作品に確かな深みが加わっている。(後編「『悲愴』が示唆する不吉な予兆」へ続く…)
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