「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映像技術の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「UHDブルーレイ その2」
●オススメBlue-ray『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
現行のブルーレイから大きくスペックアップした4K高画質パッケージソフト、UHDブルーレイについての第2回。3つの特長のうち4K高解像化については前回お話ししたが、今回は「HDR」について解説しよう。
HDRとは「ハイ・ダイナミック・レンジ」の略称で、人間の視覚特性に近似させたダイナミックレンジ(輝度の幅)の再現法のことである。ダイナミックレンジの拡大が可能になったことで、実景さながらの光彩を再現できるようになったわけだ。特に最大輝度(画面上でもっとも明るい部分=ピーク輝度)の高さの再現は必須項目で、理論上ではブルーレイのおよそ100倍の最大輝度を再現できる。
現行のブルーレイやDVD、ハイビジョン放送のダイナミックレンジに関しては、最大輝度が制限されており(UHDブルーレイの100分の1)、「スタンダード・ダイナミック・レンジ」=SDRと呼称されている。HDRでは輝度レンジを伸ばし、よりオリジナル映像に近い明るさ、輝きを表現できるようになったわけである。ちなみに現在までの日本の映画館では、HDRに対応した映画上映は皆無に近い状態だ。
6月22日に発売となるワーナーUHDブルーレイ(7作品)の中から、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を例に挙げてみよう。
逆光撮影された太陽と景色(空や砂漠)、吹きあがる炎、巨大砂嵐の中の雷光、夜の砂漠の風景と満天の星、車内(車窓)から見える外景の違いは誰の目にも明らかだ。
ブルーレイ等では確認できなかった光の中に階調が再現され、芯のある光彩が描かれる。陰影もより滑らかに描き出され、極めて暗い映像の中にある色彩も的確に再現されるのだ。こうした高精細な再現能力によって、オリジナル映像が持つ光彩や陰影、色彩情報を最大限に楽しむことができるわけである。
4KテレビのHDR対応も着実に進んでおり、UHDブルーレイに加え、今後は4K映像配信もHDR対応へと変わっていくことになる。但し、HDRの恩恵を最大限得るためには、(映画館と同様に)可能な限り外光や照明の影響を受けない環境での鑑賞が重要となる。またHDRによって色彩の再現能力が向上することで、より広い色域での映像再現法が必要となるが、この話はまた次回。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は6月30日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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