【映画作りの舞台裏】『鷹の爪』FROGMAN氏に聞く/後編
◆“クソアニメ”から“最高傑作”に評価が一変!
TVアニメ、映画、CMなどなどあらゆるメディアに出没する『鷹の爪』の誕生秘話を生みの親であるFROGMAN氏に語ってもらった。
『鷹の爪』のTVシリーズが放送されるまで、FROGMAN氏のFlashアニメはネットで話題にはなっていたものの、Flashアニメらしい雑な動きからか酷評も多かった。しかし、『鷹の爪』の放送第1回にして一変する。
放送が始まると、ネットの実況掲示板は「いけね、思わず笑っちゃった」「意外と面白いかも」と書き込まれ、第1回放送終了後には「今期最高傑作!」とコメントが数々寄せられ、『鷹の爪』祭りとなったのである。ちょうど同時期放映のアニメでは『涼宮ハルヒの憂鬱』があり、セカイ系や中二病と言われるアニメ作品の全盛期だったにもかかわらずだ。
FROGMAN氏は言う、「それまでクソアニメと言われていたのが一気に空気が変わったんですから、椎木さんとガッツポーズしましたね」。
『鷹の爪』に食いついたのはネットユーザーだけでなく、マスコミ業界でも魅了された人が続出した。「初めて取材の依頼が来たのはあの『anan』誌だったので驚きました(笑)。TBSの『NEWS23』のスタッフも気に入ってくれて、それが、番組内で放送された時事ネタを扱った『蛙男劇場』につながっていきました」。
深夜アニメやニュース番組など大人が笑えるアニメだったのが、子どもにも人気が広がったのは2012年4月にEテレの子ども向け番組『ビットワールド』のアニメコーナーで放送開始されてからだ。とたんに子どもたちも取り込み、年齢層がぐんと広がった。その後、『鷹の爪』は劇場版もヒットすれば、当初の狙いだった海外TV放映もされ、CMや企業キャラクターとのコラボなどなど、さまざまなメディアミックス展開でいまや引っ張りだこだ。
『鷹の爪』の収益で一番大きい割合を占めるのは広告関連によるものだとか。最初から広告に使いやすいキャラクターを作ろうというもくろみはあった。FROGMAN氏の言葉を借りると、“アニメ界で勝負するときのハンディキャップ”、つまり原作や有名声優、有名監督が不在なことが広告で使うときには大きな利点となるのだ。
企画が出た段階で、従来ならそれぞれにお伺いをたてないといけないことが省略でき、直しが入っても即日修正が可能という速さで対応できる。広告においてスピードは一番求められていることだという。また、「大人気キャラクターだと億単位になるところが、『鷹の爪』だとWebもゲームも着ぐるみもオールインワンパッケージで10分の1から20分の1の価格で受けられます。これまで手を出せなかった企業も可能となって、潜在的なニーズを掘り起こせると思うんです」とFROGMAN氏は胸を張る。速い、安いというウリはここでも活きているのだ。
これほどまでに「いかにビジネスとして成功するか」を念頭に置いているFROGMAN氏だが、一方で、「僕の強みは『鷹の爪』を愛していることです」と言う。「アニメ業界の人はアニメを愛し過ぎている。『アニメでないと表現できない』って言う人がいるけどそんなことはないと思う。創作活動と距離感を持って、手段を目的化しないでいたい。Flashアニメがダメだとなれば、他のツールで作ればいいだけのこと」。『鷹の爪』のキャラクターの魅力を絶対的に信じているからこそ出る言葉だ。
家族思いで温かいハートの持ち主で、ドライでクールなビジネスマンでもあるFROGMAN氏。そんな彼だからこそ、幅広い層に長年愛される『鷹の爪』という憎めないキャラクターを生み出せたのだろう。(文:入江奈々/ライター)
『鷹の爪8 〜吉田くんのXファイル〜は8月20日より先行公開、27日より全国拡大公開される。
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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